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第15話 【アールサス視点】思いがけない提案

「もしかしてコレ、アールサス様が錬金術で作ったものですか……?」 「あ、ああ。効能は悪くないと思う」 「うわ、すごい! 大切に使います!」 キラキラした笑顔が輝いて見えて、僕は初めてウルクの瞳が若葉のような鮮烈なグリーンなんだと知った。 「あの! 使ってみてもいいですか?」 「もちろん構わないよ」 嬉しそうに微笑んだウルクが、僕が作った傷薬を指で掬って傷口に塗り込むと、一瞬で元々そこに傷なんて無かったみたいに滑らかな肌になる。 「うわー! 傷が一瞬でなくなった!! さすがアールサス様お手製の傷薬!!!」 ウルクがまるで子供のように歓声を上げる。その素直な様子はあどけなくて、初めて見るその愛らしい笑顔に、思わず呆然と見惚れてしまった。 「あっ……」 ハッとしたように僕を見て、慌てて居住いを正し真面目な顔をするけれど、僕の目にはもう、さっきのウルクの表情が焼きついていた。きっとあれが、本来の彼の姿なんだろう。 「すみません、こんなに効果が高い傷薬を使ったのが初めてで、つい」 コホンとひとつ咳払いして、ウルクは僕に視線を合わせて来た。 「あの、実はひとつ提案があるのですが」 さっきとは打って変わって至極真面目な顔でそんな事を言って来る。何を言い出すのか、俄然興味が湧いて来た。 「あの、もし良かったらアールサス様が創り出した成果物を買い取らせてくれませんか?」 「買い取る……?」 「はい。オレ、先週冒険者ギルドと商業ギルドに入ったんです。その、まだ最低ランクだから難しいのは無理だけど、アールサス様が必要な素材を調達できるし、作ったけど今は使わないなっていう錬成物はオレが買い取って、必要な人に売る事ができます」 開いた口が塞がらなかった。 予想もしていないことを言われて思考停止状態でウルクの顔をぼんやり見つめるだけの僕の手を、ウルクがギュッと握り込む。 「アールサス様にとっても悪い話ではないと思うんですが。私なら相場より高く買いますし、アールサス様も錬金術の素材を買うために資金はあった方が良いでしょう?」 ウルクが興味を持ったのは、僕にじゃなくて商売のタネとしての錬金術だったのかと思うとなんだかムカムカした。 なんだか悔しくて黙っていたら、ハッとしたようにウルクが僕の手を離す。 それがちょっと寂しい。 手が冷え切ってた前回とは違って、あったかくて気持ちよかったのに。 「……これ!」 僕の気持ちなど知る由もないウルクは、身につけていたウエストポーチから、折り畳まれた袋を取り出した。

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