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第16話 【アールサス視点】錬金してみようか?

「これは……マジックバッグ?」 「はい。出してみてください」 「……?」 さすが豪商の息子なだけあって、なんて事ない顔でマジックバッグを出してくる。これだけでも相当高価なはずなのに。 なんだかちょっとだけ嫌な気持ちになりつつも中身を確認した僕は首を傾げた。 『効果2倍』のリグル草と、『美味しい』ラテの泉の水、『疲れが取れる』テカの実? しかもどれも品質がすごく高い。マジックバッグに入っていたからか鮮度もいいし、言う事なしだ。 それに、この三種類で出来るものと言えば。 「もしかして、ポーションの素材……?」 「はい。先週私が採取した中で、一番いいのを持って来ました。これなら、合格ですか……?」 「合格もなにも、こんなに状態が良くて付加効果もいい素材なんて、なかなか一気に揃う物じゃない」 「良かった」 ウルクがホッとしたように薄く微笑む。 「アールサス様が錬金をなさると聞いたので、興味が出て先週書庫でちょっと本を読んでみたら、ポーションにどんな素材が必要か分かって」 「えっ」 僕は耳を疑った。僕のことを嫌っているとばかり思っていたウルクが、まさか僕に歩み寄ろうと錬金術の本を読んでいたというのだろうか。 「それなら私が良い素材を見つけてきて、アールサス様が錬成したらすごく品質のいい物が作れるんじゃないかと思ったんです。ポーションは錬金術で作ると付加効果が残りやすい物のひとつだって書いてあったから、ポーションにあったら嬉しいなって思う効果がある素材を厳選したんですけど」 「なるほど……」 ウルクの頬にまだ残っている浅い傷を見ながら、僕は少し感動していた。 手だけでなく頬にまで傷が残るくらい、ウルクは必死で探してくれたのだろう。あんなに選り抜きの付加効果、一度や二度採集した程度でそう簡単にそろえられるわけがない。 きっと何度も草原に出て、たくさんの素材を集めたに違いない。 しかも、自らの手で。危険も顧みず。 あんなにつっけんどんで、高飛車に見えていた、ウルクの気の強そうな顔がけなげで愛らしく見えてきた。 「これ、良かったら錬金してみようか?」 「えっ? ま、まさか今……?」 「ああ。ポーション程度なら10分もあればできるから」 「ぜひ……!!!」 ウルクが目をキラキラさせて僕の手元を見る。 思ったよりも随分食いつきが良くて、ウルクが本当に僕の錬金術に興味を持ってくれてるんだと思えた。 いつもに比べたらかなり緊張しつつ、手早くリグル草とテカの実をすりつぶし、煮沸したラテの泉の水に溶かし込んでから錬金釜へと回し入れる。

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