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第17話 【アールサス視点】なんだか気が引ける

くるくると釜の中身をかき混ぜながら、魔力を込めて慎重に付加効果を定着させていくと窯の中身は、淡く怪しく発光し始めた。 「釜の中が……光ってきた……!」 「この光が収束したらできあがりだ。ウルクが用意してくれた付加効果は、ちゃんと定着できたと思う」 「すごい……!」 釜の中身がグツグツと煮えたぎりながら、僕の魔力と素材の力を取り込んで、新たな錬成物へと昇華していく。いつ見てもワクワクする瞬間だ。 ウルクもこの不思議さに見惚れている。 その時、釜の中から閃光が迸った。 「うわっ!?」 ウルクがびっくりしたように叫んで目を瞬かせている。 正直僕も目がチカチカする。いつもならこの瞬間は目を閉じてやり過ごすのに、今日はウルクの表情が面白くてそっちに気を取られてしまっていた。 不覚だ。 「ごめん、出来上がる寸前にこんな風に強烈な光を放つんだ。言い忘れていた」 「そうなんですね……すごい光だった……」 「でも、ほら。出来上がったぞ」 「えっ! あ、本当だ……!」 出来上がったポーションを渡すと、ウルクはマジマジとポーションを見つめてぽそりとこう言った。 「すごい、付加効果が3つもついたポーションなんて、本当にできるんだ……」 良かった、喜んでくれているようだ。 「良かったらそれも持って帰ってくれ。ウルクが採ってきてくれた素材で作ったんだから、君のものだ」 「いいえ、ちゃんと買います。すごくいい出来だと思うから、私だけではなく、冒険者の方にも感想を聞いてみたい。少しずつ小分けにして、試飲して貰ってもいいでしょうか」 「ああ、それなら同じ物を幾つか作ろうか?」 「えっ」 棚の中から手持ちの素材を取り出してさっきのレシピを用いて全く同じ効果の物を10個ほど錬成する。品質を確かめたウルクは驚愕の表情を浮かべて僕とポーションを見比べていたけれど、結局は全部買い取ってくれた。 しかもポーションを買い取るとは思えない額で。 何度も固辞したけれど、「それだけの価値がある」「安売りしないで欲しい」と説得され、お金を受け取る羽目になった。やっぱり金持ちなんだなぁ、と微妙な気持ちになってしまった。 ウルクが傷だらけになって採取してきた素材で、素晴らしい付加効果を入手した上にお金まで貰ってはなんだか気が引ける。 ウルクに借りばかりつくってしまっている気がして、その日は割り切れない気持ちが募っただけだった。 *** その翌日のことだ。 学園の廊下で、僕は信じられない物を見た。 「……笑ってる」 「え?」 僕の視線の先に気がついたのか、学友のカルバンはああ、と頷いた。

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