「ウルク、えらくご機嫌だな」 家に帰る馬車の中でソワソワするオレを見て、お父様が面白そうに笑っている。 「アールサス様に素晴らしく高品質なポーションを作っていただいたんだ」 どや！　という気持ちでお父様に見せてみる。 オレも商業ギルドで研修を受けて『鑑定』スキルをゲットしたけど、お父様なら俺よりももっともっと上位の『鑑定』スキルを持ってるだろうから、このポーションのすごさは分かってもらえるだろう。 案の定、さすがのお父様も息をのんだ。 「なんだこりゃ！　品質値80……！　しかも『効果2倍』『美味しい』『疲れが取れる』……？　3つも効果がついてるじゃないか」 「すごいでしょ！？　僕が先週採取した中で、ポーションに向いてそうな効果がある素材を持って行ったんだけどね、アールサス様がその付加効果を全部生かしてくれたんだ」 「とんでもねぇな」 「オレ、これを売ってみたい」 「おう、頑張れ。初仕事にゃもったいねぇくらいの上物だ」 「うん！！！　そうだお父様、ちっちゃな瓶をたくさん欲しいんだけど、お父様のお店にある？」 「そりゃもちろんあるぜ。サイズも色々あるから、家に帰る前に寄るか？　特別に二割引きしてやる」 「ありがとう！」 お父様のお店は王都の中でも変わったお店で有名で、高級なお店が立ち並ぶ通りと一般市民も立ち入りやすい市場とをつなぐ形で建っている。市場の小さな露店から始まった雑貨屋は少しずつ規模を大きくしていって、奥へ奥へと店を広げていった結果、今の形になったらしい。 店の入り口に屈強そうな、けれど愛想のいいお兄ちゃんがいる以外は普通の店と変わらない感じだけど、店の中に入ると異様に広い。 オレはこの中を探索するのが大好きだ。 宝さがしみたいで面白い。 今までは瓶なんて興味がなかったからあんまり気にしたこともなかったけど、これからは何が役に立つか分からないからしっかり見ておかないと。 そう肝に銘じてお父様のお店をじっくり見て回って、僕は結局40個の小瓶と40個の中瓶、ろうと、そして清浄の魔道具とラベルを作れる魔道具を購入した。 初期コストは結構かかっちゃったけど、宣伝のためには仕方がない。 邸に帰ってアールサス様から買い取ったポーションのうち2本を10本の小瓶に分けて試飲用のサンプルを作ってみた。ラベルには、品質値と付加効果を書き込んでみた。ちっちゃな瓶もラベルがつくと不思議と売り物らしく見えてくる。 出来上がりに満足したオレは、その夜めちゃくちゃワクワクした気持ちのまま眠りについた。