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第22話 頼もしい護衛

「ま、普通はな」 「でしょ。オレだって怖いもん」 「でもお前は有名だからな。お前の信用はまだまだでも、ボルド商会の息子ってことはわかってるし、お前がイキがって親の顔に泥を塗るようなタイプじゃないって事くらいは浸透してると思うぜ」 「そうかなぁ」 「少なくとも数回依頼をこなしてるってくらいの薄っすい信頼はあるだろ。どうせギルドに行くんだ、試してみればいいんじゃないか?」 「うん……ま、やってみる価値はあるよね!」 うじうじ考えたって仕方がない。飛び込み営業の時も、不安になりそうになったら、いつも自分にそう言い聞かせてた。あの時自分の背中を押してくれたのは『会社のブランド』だったけど、今はそれが『お父様の名声』になったと思えば分かりやすい。 悔しいけど、今はそれを借りて頑張って、そのうちオレ自身の信頼をコツコツ築いていくしかないんだよね。 「その意気だ」 「うん! ありがと」 色んな意味で頼もしい護衛に心から感謝しつつ、オレはギルドへと向かった。 *** ギルドについて最初にやるのは、とりあえずギルドマスターへの挨拶だろう。何も言わずにエグい高品質ポーションを流通させたら、あとで問題になる可能性もあるし。 最初に商業ギルドに行って、受付でギルドマスターのショーンさんを呼んで貰う。 本来だったら商業ギルドに入ったばかりのオレごときが面会を申し出る事なんてできる筈がないんだけど、そこはそれ、お父様のコネというヤツだ。 ショーンさんはお父様と仲がいいらしくって、オレが商業ギルドに登録に来た時も顔を見せてくれたし、その時に「商売の方向性が決まったらまたおいで。変な事に巻き込まれないように少しだけサポートしてあげるよ」なんて言ってくれていた。 そういう縁は大切にしたい。少なくとも、お父様とショーンさんの友情を台無しにしないようにしないと。 ちょっとドキドキしながら待っていたら、ショーンさんが上階からゆっくりと降りてきた。 前回も思ったけど、センター分けの銀髪サラサラストレートに怜悧な銀縁メガネがクールだ。 細身で優し気な雰囲気だけど、汚い商売をする人にはかなり厳しくてえげつない制裁を与えるらしいという噂は聞いたことがある。ただ、その制裁の中身は一切伝わってこないのが逆に怖い。 目が合うと、ショーンさんはにっこりと笑いかけてくれた。 「やあ、ついに方向性が決まったのかな?」 「はい! ご迷惑をおかけしないように、事前に相談に来ました」

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