23 / 111
第23話 商業ギルドのショーンさん
「そうか、そうか。君はデュークの無鉄砲さは受け継がなかったようだね。その慎重さなら手堅い商売ができそうだ」
ふふ、と微笑んでショーンさんがオレの前のソファにゆったりと腰掛ける。お父様の事をデューク、なんて呼び捨てにする人はショーンさんと冒険者ギルドのギルドマスターくらいしか知らないから、きっとお父様と本当に仲がいいんだと思う。
ショーンさんに褒められてちょっとドキドキしながら、オレはマジックバッグからアールサス様のポーションを取り出した。
「えっと、高品質なポーションを売ろうと思っていて……これは試飲用なんですけど、冒険者の人たちにまずは無料で試して貰って、ご意見を色々貰いながら性能や価格を検討して、最終的には通常のポーションの2~3倍の価格で販売できたらと思っています」
「2~3倍とは大きく出たね」
笑いながらポーションを手に取ったショーンさんは、瞬時に表情が固まった。
そりゃそうだ。商業ギルドのギルドマスターだもの。このポーションのすごさなんて一瞬で分かるに違いない。
「こんな物をどこで……」
呟きかけて、ハッとしたような顔をしたショーンさんは、オレの顔をまじまじと見てくる。
「錬金?」
「はい」
「なるほど、素晴らしい品だ。君が高値で売りたいというのも理解できる」
「ありがとうございます」
「ちなみにどれくらいの物量を流通させるつもりだい?」
「やっぱり『効果2倍』が付与されてる物は、月に二十個くらいの限定販売が妥当かなと思っています。それ以外にも冒険者の方々の意見を聞きながら商品を開発したいと思ってるんですけど」
「なるほど、その程度なら問題ないだろう。確かに『効果二倍』は影響が大きい。数を売りすぎない方がいいな。デュークの息子とは言え君はまだ商売の世界では新参者だ。目立ちすぎない方がいい」
「はい。気をつけます」
「ちなみにその言いぶりでは、その数を安定して用意できる、開発もできる、そういう事だね?」
目を覗き込まれて、一瞬だけどう言おうか迷った。けれど、これから販売していけばそれは簡単にバレてしまう事だ。だから、正直に言うことにした。
「はい。できると思います。それであの……お願いがあって」
「うむ、なんだい?」
「あの、誰が作っているのかはできる限りシークレットにしたいんです。お力添えいただけませんか?」
「……」
ショーンさんは、しばらく無言でオレを見つめて、そしてフフ、と小さく笑った。
「いいだろう。才能ある人材は囲い込むべきだ」
ともだちにシェアしよう!