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第27話 失礼しちゃうな
「そうだ。たったの3倍だ。なのに価格は10倍だ。それでも売れてる。中堅以上の冒険者なら必須アイテムって言ってもいい。なぜだか分かるか?」
失礼しちゃうなー。いくらオレがまだ14歳で冒険者ギルドに入ったばっかりだって言っても、それくらい分かるっちゅうの。回復薬の準備は生死を分けるなんて事、冒険者なら誰でも知ってると思う。
「一度に回復できる量が大きくないと、戦闘中に深傷を負った際に間に合わないから。あと、遠出をする時に荷物を減らすため?」
「そうだ。一般的な冒険者はお前が持ち歩いてるようなマジックバッグなんかにゃなかなか手が出ねぇからな。持って歩ける量にゃ限りがある。そこでだ」
ズイッと凶悪そうな顔が近づいてきた。怖い。
「お前のこの爆弾みてぇなポーションがそんな安値で出回ってみろ。壮絶な取り合いになるのは間違いないだろう。まぁそれは確実としてだ」
さらにググイッと顔が近づいてくる。圧が凄い。
「お前、この爆弾を無料で配って冒険者に試して貰うつもりだって言ったよなぁ。しかも作ったヤツは明かさねぇだのカッコイイ事言ったらしいじゃねぇか」
「は、はい……」
今度はドスン、と音を立ててソファの背もたれに深く身を沈める。両腕をせもたれに広げてニヤニヤと笑うギルドマスターには、小さな獲物をいたぶって楽しむ猛獣のような恐ろしさがあった。
「そんな事してみろ。お前みてぇな甘ちゃんの護衛を引き受けちまった哀れなグレイグはズタボロにのされて、お前は拉致の上拷問されて、嫌でもこの爆弾の作者を吐かされるだろうなぁ。可哀相に」
「そ、そんな。なんで……」
「それが分からねぇから甘ちゃんだって言ってるんだ。お前、まだ家に同じモンがあるって言ったよなぁ。しかもショーンに同じ物をまた作ることも、冒険者の希望を取り入れて新たなモンを作る事もできるって言ったそうじゃねぇか」
「は、はい……」
「普通は出来ねぇんだよそんな事」
やっぱりそうだよね。知ってた。知ってたけど。
「そんな事ができるヤツがいるなら、俺ならソイツが死ぬまで監禁して『効果2倍』のハイポーションだのエクスポーションだの作らせまくるね。そうすりゃぁボロ儲けだ」
「ひえ……」
「この爆弾をタダで冒険者に試飲させるって事は、お前が凄腕の錬金術師を囲ってる、しかもこんな上物をタダで配れるくらい裕福でアホだって宣伝してるみてぇなモンだ」
「……っ」
ショックだった。
そこまで言われて、やっと実感がわいてきた。
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