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第33話 【アールサス視点】絶望的な気持ち
ウルクを伴って自分の部屋に戻ったはいいけれど、本当にどういう顔をしていたらいいのか分からない。
僕は途方に暮れてしまった。
ウルクの方を見る事もできなくて、ただただ時が過ぎていく。
僕が何も言わないからか、ウルクから話しかけられる事もなくて、いよいよ困ってしまった僕は、もう破れかぶれな気持ちになっていたのか、このところずっと僕を悩ませている事を率直に口にしていた。
「……先日、学園でお前を見かけた」
それを聞いたウルクは僕を見上げて困ったような顔をする。
「それは、申し訳ありません」
「……? なぜ謝る」
意味が分からなかった。
「不快な思いをさせてしまったでしょうから」
「確かに不快な思いはしたが」
言った瞬間、ウルクがクシャッと顔を歪ませる。
その悲しそうな顔を見て、僕はしまった、と思った。
僕は言葉選びが上手くない。誤解を与えたかも知れないと慌てて言葉を取り消そうとしたところに、ウルクの方が先に口を開いた。
「学園では出来うる限り姿を見せないよう気をつけてはいたのですが、不覚です。今後はより一層気をつけますので」
「姿を見せないように? ……なぜだ」
思いもかけない事を言われて僕は自分の言葉を取り消す事も忘れて聞き返す。だから学園で姿を見かけなかったのか。
「なぜって、今ご自分でも仰ったでしょう。アールサス様が不快な気持ちになるからですよ。気に食わない婚約者の顔なんて学園でまで見たくないかなって思って、これでも気を遣ってるんです」
ウルクの言葉に、僕は絶望的な気持ちになった。
まるであの日……僕がウルクを書庫に放置してしまった日みたいに、ウルクから棘のある言葉が出てくる。
せっかくこの前は笑ってくれたのに。
ああでも、この言葉はきっと僕が言わせてしまったんだ。僕が、不用意な言葉で彼を傷つけたから。
「気に食わないなんて思ってない……」
自分が不甲斐なくて、力のない声しかでなかった。
「えっ?」
ウルクが驚いたように僕を見る。
「僕は、ウルクの事を『気に食わない婚約者』だなんて、思っていない」
「え……」
絶対に嘘だ、って顔してる。
でも本当なんだ。うまく回らない口だけど、なんとかその誤解だけは解きたい。
「最初は確かにこの婚約が嫌だったけれど……でもウルクは、それでも僕に歩み寄ろうとしてくれたんだろう? そんなウルクの事、気に食わないなんて思う筈がない」
「だってさっき」
「不快な思いをしたと言ったのは、その……」
言おうとして、急に恥ずかしくなった。
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