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第34話 【アールサス視点】目が潰れるかと思った
だってその……なんだか嫉妬してるみたいで恥ずかしいじゃないか。
けれどウルクがあまりにも真っ直ぐに僕を見上げているから、ごまかすわけにもいかない。ウルクの若葉のような綺麗なグリーンの瞳から頑張って目を逸らさずに口を開いた。
「不快な思いをしたと言ったのは、その……ウルクがあんまり楽しそうに笑ってたから……」
ウルクが意味が分からない、という様子で首を傾げる。僕はますます恥ずかしくなった。それでも、言わない訳にはいかない。だってウルクに勘違いされたままの方がよっぽど嫌だから。
「僕には、あんな顔で笑ってくれないし……」
だんだん、声が小さくなっていくのは許してほしい。
「その、僕は……表情が硬いとよく言われるし……言葉も上手くなくて、誤解を与える事が多くて、ウルクに不快な思いをさせてしまう事も、あると思う、けど……」
だんだん、自分でも何を言ってるのか分からなくなってきた。
錬金だけしてればこんな気持ちになることもないのに。
でも、ウルクに嫌われてもう笑って貰えないのは、この居心地の悪い感じよりもずっとずっと嫌だ。
「誤解……? アールサス様、オレの事……嫌いじゃないんですか?」
「嫌いじゃない!」
食い気味でそう叫んだ僕に、ウルクがまんまるな目を向ける。若葉の瞳が大きくなって、すごく、すごく綺麗だった。
「学園で会っても……嫌じゃない?」
「嫌じゃない」
「話しかけても?」
「嬉しい」
「ほ……本当に?」
「本当だ!」
瞬間。
ウルクが満面の笑みを浮かべた。
可愛過ぎて、目が潰れるかと思った。
「あれ、じゃあ」
せっかく可愛らしい笑顔だったのに、ウルクがふと真顔になる。
「今日不機嫌だったのは……?」
「別に不機嫌じゃなかったが……学園でウルクを見かけた時の事が気になって……どういう顔でウルクと居ればいいのか分からなくて、困ってはいた」
「なんだぁ、オレ、めちゃくちゃ嫌われてると思ってた……!」
心底ホッとしたように笑うウルクはとてつもなく可愛いかった。赤い髪も、このところ少し日焼けした顔も、太陽みたいな笑顔に相応しいと思える。
どうやら誤解が解けたようで、僕もようやくホッとした。話すのは得意じゃないけど、頑張って良かった。
そう思ったのに、ウルクがまた表情を曇らせる。さっきからコロコロと表情が変わって、それはそれで魅力的だけれど今度は何だ、と思わず身構えてしまった。
「あ、オレ……」
言って、ハッとしたように口をおさえる。そして背筋をピンと伸ばして口元をキリリと締めた。
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