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第35話 【アールサス視点】ウルクの告解

「あの、実は私」 つい、こっちの口元は緩んでしまった。そう言えばウルクは、僕の前では『私』と言っていた。そんなそもそものところから随分と無理をさせてしまっていたんだな、と分かって申し訳なく感じる。 「オレ、でいい。僕を相手に畏まらないでくれ」 僕がそう言うと、ウルクははにかんだように微笑んだ。少し気を許してくれたみたいで嬉しい。 けれどウルクは、すぐに悲しそうに眉根を寄せた。 「あの、オレ、アールサス様に謝らないといけない事があって」 「謝らないといけない事……?」 「オレ、迂闊なことして、アールサス様を危険な目に遭わせるところだったんです」 本当に悲しそうに、ウルクが呟く。なんだか僕も悲しい気持ちになった。 「もしかしてそれは……今日ウルクとボルド氏が急に訪ねて来たのと関係ある?」 僕の問いに、ウルクがコクンと頷く。 「オレ……アールサス様が作ってくれたポーションがあんまり凄かったから、冒険者の人たちに試飲して貰おうと思ったんです。それで意見を貰って冒険者の人たちが必要な付加効果とか適正な価格とか検討しようと思って」 「うん」 それの何が悪いのか分からない。とりあえず黙って聞いてみようと思った。 「ポーションを試飲用に小分けにして、ギルドに持ち込んだらギルドマスター達からすごく怒られてしまって」 「なぜ? 何が悪いのか分からない」 「アールサス様が作ってくれたポーションはギルドマスターでさえ驚愕するような上物なのに、それをただで配ろうとするなんて、オレが凄腕の錬金術師を囲ってる、しかもこんな上物をタダで配れるくらい裕福でアホだって宣伝してるみたいなものだって」 「……」 随分乱暴な物言いだ、とむしろ僕はウルクにそんな酷い言い方をしたヤツに不快感を感じてしまった。なにもそんな言い方をしなくてもいいのに。 「やっぱり、何が悪いのか分からない。ウルクがそんな風に言われるのは不快だ」 「オレも分かってなくて……でも、意見を聞いて改良するって事は、そんな上物を大量に、何度でも用意できる、しかも改良できると言っているようなもので」 「できるが?」 「それは、アールサス様の錬金の才がずば抜けてるんだって。普通はそんな事できない、そんな事ができるヤツがいるなら、死ぬまで監禁して『効果2倍』のハイポーションだのエクスポーションだの作らせまくるってヤツがでてくるって……そうすりゃぁボロ儲けだってはっきり言われて」 ウルクの若草色の瞳に、透明な涙が一気に盛り上がってくる。

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