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第37話 【アールサス視点】ウルクがいい
「でも、アールサス様の助けになりたいと思ったのに結局は危険に晒しそうになっただけだし」
「それは……!」
「アールサス様の才能が明らかになった今では、錬成物は商業ギルドや冒険者ギルドのマスター達がいくらでも適正な価格で買い取ってくれると思うし」
そう言ってウルクはちょっと寂しそうに笑う。
「アールサス様がぼったくられる心配もないから安心だし、オレが変に関わるよりよっぽどいい」
その言葉に、僕はなんだか焦燥感にかられた。
「待ってくれ……!」
変に関わるよりよっぽどいいだなんて、ウルクがまるで僕との関係を絶とうとしているように聞こえたからだ。
そんなの嫌だ。せっかく、思っていたよりもずっとずっとウルクが優しくて、僕の事を考えてくれているって事が分かったのに。
ちゃんと向き合って、仲良くなりたいと思ったところで距離を置かれるのなんて絶対に嫌だ。
「僕はウルクがいい」
「?」
「僕が作った物は、ウルクにしか売りたくない……!」
ウルクがどうして? という顔をする。
僕だってこれまでそんな事にこだわってたわけじゃない。でも必死だった。
「一生懸命研究して、錬金したものを売る相手は、ウルクがいいんだ」
「でも」
「これまで僕、実は自分が作った物って売ったことがないんだ」
「えっ」
「お母様が苦しんでるのが可哀相で、お母様が元気になるように薬を作ってただけだから売るってそもそも考えてなかったし……作ったものはほとんどお母様の薬を研究するための素材にしてたから、売れる物が大量にあるわけでもないけど……」
「本当に……? こんなにすごい物を作ってるのに……?」
すごいびっくりした顔をされるけど、錬金の錬金や基礎で作るようなものは、上位の練成物の素材になる物が多い。大量に作っても、練成物を掛け合わせて新たな物を作り出す研究をしていれば、あっという間になくなってしまうんだ。
「作る物ってほとんどが新たなレシピを見つけ出すための素材として使うから、あんまり残ってないんだ。それで出来た物はさらに上位の物をつくるための素材にするか、失敗作になっちゃうから……」
「あー……ああ、なるほど」
「ウルクが売りたいって言うなら売れそうな物も作るけど、ウルクをそんな顔にさせるような人のためにわざわざ何かを作りたいとは思わない」
「そっかぁ……」
僕がキッパリと言うと、ウルクはなんだか苦笑した。
「オレ、余計なお世話してたかも」
「? どういう意味だ?」
「アールサス様がどうしたいのかを聞くべきだったなと思って」
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