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第38話 自分が恥ずかしい
アールサス様の話を聞いて、僕はもう、自分が恥ずかしくなってしまった。
前世の記憶を元にアールサス様の気持ちを勝手に推し量ったつもりになって暴走して……結果がこの有様だ。
つまりアールサス様はこれまでもこれからも、練成物を売ったりすることに興味なんて無いんだ。
でもよく考えればそりゃそうだよね。だってそもそもお母様の病を治せなかったのがトラウマで、それを開発したいだけなんだもん。
アールサス様が作った物を売ればいいって思ったのはあくまでオレの考えで、アールサス様がゲーム内で主人公に高額で練成物や情報を売っていたのを思い出して、借金を早いとこ返したいんだろうな……って勝手に思っただけのことだ。
きっと主人公に対しては、ケガをしたところを助けたのがきっかけで売っていたに過ぎないんだろう。
そもそも借金なんてアールサス様がしたわけでもない。
お父様は伯爵様に惚れてるんだから無理な取り立てなんてきっとしないだろうし、オレとの婚約が二年後に解消されるのは確定してるんだから、アールサス様が頑張って借金を返す必要なんてなかったんだよね。よく考えれば。
なのに先走って暴走しちゃって、バカだなぁオレ。
「あの……アールサス様は別に、練成物を売りたいわけじゃないんですよね?」
「積極的に売りたいとは思っていなかった」
「ですよね。じゃあ、ムリに売り物を作る必要なんてないです。ごめんなさい、オレが勝手に先走ってたって今やっと分かりました」
「待て、ウルクは? ウルクの商売はどうなる?」
「それはどうとでも」
アールサス様が薬の研究に集中できる環境を作ろうって思ってたはずだったのに、いつの間にかズレちゃってたなぁ。
「オレ、鑑定には結構才能があるみたいで、貴重な付加効果がついた物とか見つけるのうまいんです。そーいうの販売するのでも結構いけると思うし、アールサス様が必要な物を言ってくれれば探しますんで!」
そうだそうだ、オレが探せば高価な素材とかも安く提供できるし、そんな風にサポートすれば良かったんだ。
これならアールサス様の時間を奪うこともないし、アールサス様の能力が周囲にバレる可能性だって低くなるだろう。
ちょっとスッキリしたかも。
そう思ってニッコリ笑ってアールサス様の方へ顔を向けたら、アールサス様はなぜかすっごく微妙な顔でオレを見ていた。
あれ?
「あっ! もちろん売りたい物があったらオレでもギルドでも買い取りますよ!」
「違う。そうじゃない」
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