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第41話 今日のアールサス様は面倒くさい
貴族のアールサス様から見たら馴れ馴れしく見えるのかも知れないが、それくらい通常運転だ。でも、アールサス様は嫌なんだろう。なんせ貴族だもんなぁ。
「平民的には普通なんで気にもとめてなかったですけど……えっと、出来るだけ気をつけますね? 特にアールサス様には」
ちょっと感心しつつそう言ったら、アールサス様はまた微妙な顔をする。
「僕は別にいい、婚約者なんだから。問題はその男だ。婚約者でもない人物に肌を許すのは適切でないと思う」
「肌って! 大袈裟な! ていうか、誤解を招く言い方しないでくださいよ」
肩叩いたり肩組んだりするくらいで『肌を許す』扱いになんの!? この世界の貴族社会、貞操観念高すぎない!?
いや、肩くらい組んでるの学園でも見た事あるって!
アールサス様の貞操観念が特殊なんだよ。あーびっくりした。
でも、アールサス様的には許し難い事なんだろう。少なくとも二年は婚約者なんだし、貴族って体面もあるからなぁ……学園では気をつける方が無難なのかも知れない。
そう考えて自分なりに納得した。
「でも、アールサス様が仰っていることは分かりました。今後は気をつけます」
オレがそう言うと、アールサス様は明らかにホッとした顔をした。
「そうか、うん、そうしてくれ」
やっとアールサス様がにっこりしてくれて、オレも安心する。なのに、アールサス様はまたすぐに表情を曇らせた。今日のアールサス様はやたらと面倒くさいな。
「しかしその護衛、学園でも採取でも一緒とは……四六時中一緒じゃないか。本当に信頼できるんだろうな」
「四六時中じゃないですって。学園では専攻の科も違うんですから」
「だが……」
「心配しなくても、いいヤツですよ」
珍しく食い下がるなぁ、と苦笑しながらそう言った瞬間、アールサス様の薄ピンクの唇がちょっとだけ尖った。
え、何??? 拗ねてる!?
可愛い……!!!!!
可愛いんですけど!!!????
内心興奮しつつも表面上は平静を装っていたら、アールサス様がしばし黙考してから口を開いた。
「……ウルク、僕たちは互いの常識が違いすぎてすれ違っている面があると思う」
アールサス様が至極真面目な顔で言った。
それは同感だ、と深く頷く。
「考えたんだが」
「はい」
「やっぱりウルクには僕が作った物を売って貰いたいと思うんだが」
さっきの話とそれがどうつながるんだと言いたい気持ちもあるけど、とりあえず頷く。
「いいですよ」
「二つ返事だな」
「元々そうするつもりでしたから」
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