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第44話 笑い合っていけたらいいのに
「ギルドマスター達は、アールサス様の事を守るために厳しく言ってるだけなんで、あんまり嫌わないでくださいね」
もしもオレと疎遠になった場合、アールサス様を守ってくれるのはきっとギルドマスター達だろう。そう考えると、できれば友好な関係性を築いておいた方がいい。
そう思って助言したら、アールサス様はコクン、と頷いてくれた。
オレからもお互いのいい情報を主に入れていくように気をつけよう。密かにそんな事を考える。
その後はアールサス様から、オレがアールサス様の錬成物を売る事ができるようになった時のために、売ってもいい錬成物を見せてもらってそのリストを作ったり、現在アールサス様手持ちの素材と欲しい素材のリストを二人であーだこーだ言いながら作っていたら、あっという間に時間が経ってしまった。
「おや、やはり居たのだね」
突然そんな風に声をかけられてびっくりする。
振り返ったらお父様と伯爵様が微笑みを浮かべてオレたちを見下ろしていた。
「いくらノックしても返事がないから、心配になって開けてしまったよ」
「なんだお前たち、仲良くやってるんじゃないか」
「ふふ、そうだね。そんなに頭を突き合わせて」
お父様たちに笑われてしまった。
気がついてみたらオレとアールサス様は大量の素材を入れてあるツールボックスを二人で覗き込んでいて、確かに仲良く頭を突き合わせているような状態だ。
なんとなく照れ臭くて、アールサス様と顔を見合わせて笑い合う。
アールサス様の唯一になるのは難しいかも知れないけど、これからもこんな風に笑い合って行けたら、最高に幸せなんだけどな。
***
「ふーん、それで、今まで通りお前は採集した素材を貢いで、そのアールサス様とやらの錬金でいいのが出来たら買い取ることになったってわけか」
「うん、そう!」
貢ぐって言い方が気になるけど、大筋は間違ってない。なので元気良く返事してやった。
「貴族のボンボンにいいように使われてんなぁ」
グレイグが呆れたように言う。でも、そんな呆れ顔も気にならなかった。
なんせその後のお父様とギルドマスター達との話し合いで、アールサス様の錬成物を販売する許可がおりたからだ。オレは今、最高にやる気に溢れている。
もちろん全部が全部解禁されたわけじゃない。
アールサス様の錬成物は商売を始めたばかりのオレが値付けすると、この前みたいに価格破壊級の値付けをしてしまう恐れがあるから、まずは商業ギルドのマスター、ショーンさんの所に持ち込んで、ギルドで買い取るものと市場に出していい物を選別してもらう事になったんだ。
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