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第45話 ひと言多いんだよ
★ 読んで、応援してくださった皆様のおかげで、電子書籍化していただける事になりました!
◆発行日: 2024年1月12日
◆タイトル: 『BLゲームに異世界転生!? 師匠兼護衛騎士様に溺愛されています!!』★改題しております
◆イラスト 金ひかる先生
電子書籍化にあたり、このWEB投稿版からグレイグとのエピソードが盛りだくさんに盛り込まれ、このお話を読んだ方でもかなり新鮮に読めると思います。ぜひ読んでいただきたいです♡
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悔しいけど、今は仕方ない。
最初のうちはショーンさんの値付けのポイントをできるだけ聞き取って、コツ勘を養っていくしかないんだ。そう腹を括ってしまえば現状はオレにとって楽しい以外のなにものでもない。
前世の記憶でも営業職だったけど、ひとつの物を延々と言葉を尽くして売るだけだったから、それに比べたら日々色んな物に出会ってワクワクしながら売ったり買ったりできるようになるのは、それだけで魅力的だ。
それに、ショーンさんの「これ以下で販売しちゃダメだよ」っていうラインさえ守れば、値付けだって自分で出来るんだから、これ以上楽しい事ってない。
「いいんだよ。アールサス様の錬金ってホントにすごいから、オレ、練成物みるだけでも楽しいし。それにショーンさんの鑑定や値付けを継続的に一番近くで見る事ができるんだから、お金を払ったっていいくらいだ」
ショーンさん曰く、お父様は直感型でショーンさんは論理型らしい。いかにも、って感じだけど、直感型を真似るのは難しくても、ショーンさんの論理型なら真似る事ができる気がするから、師事するならショーンさんだろう。
「そんなモンかねぇ」
「そんなモンだよ」
「ふーん……お、あれ、ロップ草じゃねぇか?」
「あ、ホントだ。グレイグってホント目がいいよね」
褒めるとグレイグは嬉しそうに笑う。最初会った時は年上のお兄ちゃんかと思ったくらいに大人っぽく見えてたけど、こういう顔を見るとむしろちょっと可愛くて年下っぽくも見えるから不思議だ。
「ウルクより背が高いからな! 遠くまで見えるのかもな」
ニカッと笑ってそんな事を言う。ひと言多いんだよ。
でも、グレイグのおかげで採取が捗るのは確かだ。このところよく探索に来ていた森の入り口よりも今日はちょっと奥まで来ているだけあって、品質も種類も今までよりもずっと良い。
ちょっと悔しいような気もして一生懸命素材を探してたら、グレイグが笑いながらオレの腕を取った。
「そんなむくれんなって! ホラ、あっちにもーー……」
急にグレイグの目が細くなる。
剣を抜いたグレイグが大股で素早く移動して、オレの前に進み出る。
その瞬間、ヒュ、と何かが空を切る音がした。
え、と思ったら、オレの足元に切り飛ばされたんだろうツルが落ちてきて、気味悪くうごうごと動く。背中がゾワゾワした。
「食人花だ」
緊張したグレイグの声。
その背中越しに、見上げるほど大きくて醜悪な花がゆらゆらと蠢いて見えた。
「ひえっ……」
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