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第46話 ヤバいかも知んねぇ
「運が悪りぃな、こんな入り口の付近ではなかなか出てこないレベルのデカさだ」
フシュウゥゥ……と、不気味な音を立てる食人花。ツルがムチみたいにピシュン、ピシュン、としなってこちらを絡め取ろうとしてくる。グレイグがオレを守りながら剣で弾き返してくれてるからなんとかなってるけど、グレイグの背中越しにツルがいくつもいくつも唸ってるのが見えて怖い。
「こんなの初めて見た……!」
「俺もっ、こんなデケェのは初めて見た。獲物を追って……森の奥から、出てきたのかも知れねぇな!」
「大丈夫?」
ツルを弾きながらなんとかグレイグが答えてくれる。こんなに防戦一方なグレイグは初めて見た。心配になって声をかけたけどすぐには返事が返ってこなくて、ゴク、とつばを飲む音だけが聞こえてくる。
「……ちと、ヤバいかも知んねぇ」
「!」
「俺が足止めしてる間にお前は逃げろ」
グレイグがそう言うなら、ホントにヤバいんだ!
瞬時に悟って、オレはマジックバッグの中に腕を突っ込んだ。アールサス様が『もしもの時のため』って持たせてくれたものを引っ張り出す。
「グレイグ、一緒に逃げよう! 隙はオレが作る!」
「はぁ!?」
叫ぶと同時にグレイグの後ろから飛び出して、アールサス様お手製の火炎球を、食人花めがけて投げつけた。
火炎球はまっすぐに食人花に向かって飛んでいき、ぶつかった途端に炸裂して燃え上がる。空気を引き裂くような、気味の悪い叫び声を上げながらごうごうと燃える食人花。
コントロール良くて助かった、とホッと息をつくオレ。
「危ね!」
燃える苦しさからか食人花がめちゃくちゃにツルを振り回してきて、オレとグレイグはそのツルを避けながら急いで逃げ出した。
「おま……っ、なんて物隠し持ってんだ!」
「アールサス様がくれたんだよ! 昔勉強のために色々作ったことがあるって! 今のオレには役立つかもだからって……!」
「確かに助かった!」
走りながら会話する。息切れして足を止めると、グレイグもオレを守るように立ち止まってくれた。
「追ってはこれねぇみたいだな」
「良かっ、た」
ゼェゼェと肩で息をしながらなんとかそれだけ言ったけど、喉からヒューヒュー音がする。
「しっかしまぁ、錬金術師ってのはすげぇんだな」
俺よりも早く息切れから立ち直ったらしいグレイグが、あきれたみたいな声を出す。
「ね、貰っといて良かったよ……」
「あんな大物、今の俺じゃ歯が立たねぇ。正直あの時俺、死を覚悟したんだぜ」
グレイグが、苦い表情で呟いた。
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