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第55話 【グレイグ視点】疲労困憊
それでもほとんど解体し終わって素材の採集が終わりかけてるのは流石だ。
「もうちょいで終われそうか?」
「うん! あと消化液と種子だけは採取したいから、それだけ待って」
「了解。気をつけてやれよ」
「ありがとう!」
聞いただけでも危険そうだ。まだ冒険者になって日も浅いのに鑑定スキルもメキメキ伸びてるみたいだし、解体作業は日々目に見えて上達してる。
本気で取り組んでるんだなってのがそこからも分かって、正直そこはすごいと思う。
「……お待たせ!」
「おう、行くか」
「うん!」
元気いっぱいな声で答えたくせに、足下はふらついてる。
当たり前だ。
腰が抜けるくらい怖い思いして、泣きまくって、その上何時間にも渡って気を遣う解体と採取作業をやってたんだ。ふらふらになったっておかしくない。
それでも弱音を吐かずに黙々と足を進めるウルクを好ましく思いながら、俺は少しでも歩きやすい道を選んで帰途についた。
どんどんと暗くなる森を早足で歩いて行く。
いくら歩きやすい道を選んでも、やっぱり森は足元が悪い。ランタンをつけるついでに、俺はウエストポーチからポーションを取り出してウルクに声をかけた。
「お前、これ飲め」
「何?」
「あのすげーポーション、試飲用のやつ俺にもくれただろ? 今のお前の方が適任だ。自分で試せばいい」
「ダメだよもったいない! ケガもしてないのに!」
「でも体力はかなり削られてるし、疲労困憊だ。まだまだ先は長い。森を抜ける前にへたばられると俺も困る」
体力も気力も限界のくせに。もう目に生気がない。ほっといたらここで寝てしまいそうなくらいだ。
さすがの俺も、森の中をコイツを背負って戻るのは荷が重い。さりとてここで野宿ってのもできれば避けたいんだよ。なんとか街まで頑張って欲しい。
「うー……」
ちょっと唸ってたウルクは、自分なりに葛藤したあげく、結局はぐいっとポーションをあおった。
「美味しい……」
「付加効果『美味しい』が効いてんだろ。良かったな」
クスクスと笑ってやれば、ウルクも楽しそうに笑ってくれた。何時間かぶりに見た笑顔だった。
なんだかこっちまで元気が出る。
やっぱりコイツは笑ってた方がいい。
アールサス様とやらの作ったポーションはさすがに出来が良くて、一気に元気になって足取りも軽くなったウルクと共に、なんとか夜の森を抜け、草原を渡り、その日の深夜、街の門へと辿り着いた。
もう少し早く切り上げてやるべきだったなと反省しつつ、後ろを振り返ると……。
「うわっ!!??」
ウルクが、糸が切れた操り人形みたいにヘニャッと崩れ落ちるところだった。
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