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第57話 相談があるんだけど
「魔物がいる場所で気を失うとヤバいから、これからはお互いに自分の状況を正確に伝え合うようにしよう」
グレイグが、真剣な顔で言う。
当たり前だ。街に着いた途端寝落ちて、グレイグの方が疲れてる筈なのにおぶって邸まで送り届けて貰うなんて、ほんとオレどうしようもないなって自分でも思うもん。
「うん……ごめんなさい」
素直に謝ったら、グレイグはフッと表情を緩めて、慰めるみたいにオレの背中をポンポンと叩いてくれる。
「根性があるのは悪い事じゃねぇさ。ただ、お互い生きて帰るためにコミュニケーション取ろうって話だよ」
「うん」
「あとお前軽すぎだからもっと筋肉つけろよ」
「う……努力する……」
「ムキムキのウルクとかちょっと面白いしな!」
オレをからかって、ははは、と笑い飛ばしてくれる気遣いが嬉しい。
同い年だっていうのに、グレイグはオレよりもずっとずっと大人だった。孤児だって言ってたから、やっぱり自然としっかりなるのかなぁ。それだけ苦労してるって事なんだって思った。
「……あのさ、相談があるんだけど」
急に声のトーンを落として、グレイグがそんな風に囁く。
珍しい。グレイグがそんなこと言うのは初めて聞いたから、もちろんがぜん興味が出てきて聞き返してみた。
「なに?」
「昨日ゲットした魔石なんだけどさ、あれ、俺にくれねぇかな」
「えっ」
「もちろんタダでって訳じゃ無くて、ちゃんとギルドで鑑定して貰って、おんなじくらいの価値になるように別な魔石をたくさん獲ってくる。だから、それと交換って事で」
びっくりしたけど、お願いの仕方があまりにも真面目でしっかりしてるグレイグらしくって面白い。
「つまり、あの魔石を気に入ってるって事?」
「うん……その、すげぇ綺麗で、手離したくないっていうか……あんなデカいの初めて獲ったし、宝物にしたくて」
珍しく歯切れが悪い。でも、そんなに気に入ったならもちろん売る必要なんてないと思う。だってあの魔石はグレイグが命懸けで獲ったものだ。グレイグが好きにしたらいい。
本当にグレイグが死んじゃったかと思ったオレからしたら、グレイグが今ここに生きてしゃべって笑ってくれてるだけで大満足なんだから。
「そんなに気に入ったなら売る必要ないよ。そもそもグレイグが戦って獲ったんだし」
「ダメージのほとんどは火炎球だと思うけどな」
「でも、命懸けでトドメを刺したのはグレイグだから、グレイグの好きにしていいに決まってる」
「ホントか!?」
「うん!」
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