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第58話 待っていたのは
ほんとは代わりの魔石だっていらないくらいだけど、グレイグはそういうの、きっと嫌がるだろうから。
「山分けって話だったから、鑑定して貰ってその半分くらいの価値の魔石で返してくれれば」
「そっか、そうだった。半分なら俺でもすぐに返せそうだ」
グレイグの顔がパアッと明るくなって、小さくガッツポーズしてる姿にこっちまで嬉しくなる。
グレイグがそんなにも欲しがる魔石をもう一度じっくり見たいと思ったけど、学園であんなでっかい魔石をひけらかすわけにもいかない。
あとでお願いして見せて貰おう。
「あ、でもくれぐれも無理しないでね。他の魔石を獲るためにグレイグが酷いケガとかする方がオレは嫌だ」
「ウルク……」
「ね、約束!」
「……おう!」
グレイグが力強く約束してくれたから、オレはやっと心から安堵できた。
***
それから一、二週間経った頃だろうか。
学園帰りに森に採取に行く途中だったオレとグレイグがいつも通り冒険者ギルドに立ち寄ると、何故か受付で商業ギルドに行くように誘導された。
「何だろうね」
「さぁな。お前のアールサス様とやらの事で、なんか進展でもあったんじゃねぇか?」
「オレのってわけじゃ……」
思わず照れる。
「でも、アールサス様の事なら嬉しいかも。そろそろ方針が決まるといいなって思ってたんだ」
そんな事を話しながら商業ギルドに行くと、案の定マスターのショーンさんの部屋に行くように促される。扉を開けるとそこには、お父様と冒険者ギルドのマスター、ベアさんまでが顔を揃えていた。
「ひえっ……」
さすがのグレイグからも、変な声が出た。オレもびっくりして声が出なかったけど……。
「三人揃うと圧がすげぇな」
「だよね……」
「いらっしゃい。そこに座って」
ショーンさんに促されて空いてるソファに二人でちょこんと座るけど、存在感がヤバい大人に三方囲まれてて、グレイグじゃないけど圧がスゴイ。
「なんだなんだ、シケたツラしやがって」
「ベア、威圧しないの。顔だけでも充分怖いんだから、声のトーンくらい落とした方がいいんじゃないか?」
「余計なお世話だ」
身を乗り出してオレ達を睨め付けるベアさんを、ショーンさんが窘めてくれるけど、もちろんベアさんはどこ吹く風って感じだ。ショーンさんとベアさんが舌戦を繰り広げてるから、所在なくてお父様の方を見たら、楽しそうに笑ってる。よくこんな怖いの、笑って見てられるなぁ。
「こいつらいつもこうなんだよ。放っといてこっちはこっちで話そうぜ」
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