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第62話 これからの方針

「ベアさんが面倒見がいいってのは本当だよ。ベアさんの紹介で孤児の俺でも学園に通うことができてるし、少なくとも俺みたいな身寄りのねぇ若い冒険者にとっては頼れる親父みたいなもんなんだ」 「へぇ、優しいんだ……」 見かけはこんなに怖いのに、意外だった。 「普段は口も悪いし無愛想だし怖いけどな。ぼったくられた事もねぇ……多分な」 「お前みてぇな必死でまっとうに生きようとしてるガキからぼったくるほど、落ちぶれちゃいねぇよ」 冗談めかして言うグレイグを見るベアさんの目はなんだかとっても優しくて、本当にグレイグのお父様みたいだと思った。 「……じゃあ、これで決まりだな。買い取り価格はベアが提示した価格、交渉が成立したら冒険者ギルドはアールサス様の安全を一緒に守るって事で」 お父様がそう纏めてくれて、ベアさんは絶望したみたいに頭を抱える。 「おいーマジかよ、とんでもねぇぞ、あれ。責任もてねぇって」 「諦めて一緒に守ろ?」 お父様がベアさんの分厚い肩を雑に叩く。ショーンさんはそれを見てゲラゲラ笑っていた。 「よし、じゃあ次は商業ギルドだ。ショーン、いつまで笑ってる」 「あっははゴメンゴメン、では」 すう、と息を吸い込んだショーンさんが急に背筋を正して銀縁眼鏡をクイッと上げる。真面目な顔されて、むしろさっきまでの爆笑フェイスとの落差に吹き出しそうになった。 「私の方は現時点では特に継続依頼はないよ。ただ、アールサス様の練成物は市場を壊す可能性が高いからね、まずは私のところに持ち込んで鑑定を受けて貰う。ここまでは理解して貰っていると思うけど」 コク、とオレは頷いた。それは仕方ないと思う。 「私が主に関わるのは、価格統制と混乱を抑えることだよ。ヤバい物は私が引き取って商業ギルドとして捌くし、君が売っても大丈夫な物は戻すから定期的に市場の露店で売るといい。必要な時に場所を空けてあげよう」 「本当ですか……!」 「ああ。私や父親の店で販売することももちろんできるが、君は君の力で顧客を獲得していくべきだからね」 「ショーンさん……!」 「基本的に君に販売を許すのは、稀少すぎないが目を引く点があるような一点物か、一般的な錬金術師でも偶然に生み出せそうな練成物になると思うから、そのつもりでね」 にっこりと笑ってショーンさんが基準を教えてくれた。 きっとやっていくうちにお客様がどんな物を欲しがるか、どんなものなら自分で販売できるのかが分かってくるだろう。

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