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第63話 褒められた!

「ああ、それとあとひとつ」 「?」 「アールサス様は薬の練成にかなり注力していると聞いたけれど」 「はい」 「だとしたら、露店で売る物は薬を中心にするという事だけはぶらさないようにね。もちろんその横で雑多な物を売るのは問題ないよ。あの店は面白い物が手に入る、って噂になるからね。けれど」 ショーンさんは眼鏡をクイッと押し上げながら意味ありげに笑う。 「あの店の薬は品質がいい。効果が高い。年々薬の質が上がってる。薬の種類が多い。なんでもいいんだ、薬についての評判を高めておくに越した事はない」 「そ……っか、確かに。ショーンさん、ありがとうございます!」 「君達の場合は、名を上げ過ぎると変な輩に狙われそうで、ほどほどにとどめないといけないってのが厄介なところなんだけどねぇ。まぁそこのバランスは私も注意しよう。君のお父さんには借りもあるしね。若い世代に恩を売っておくのも面白そうだ。いつでも力になるよ」 ショーンさんはそう言ってにっこり笑ってくれるけど、その優しそうな笑顔が今はなんかちょっと怖い。そう思ったところにベアさんが半目で耳をホジホジしながら「ケッ」と変な音を出した。 「あんまり信じるなよ。商人は損得勘定で話するから後が怖いぞ。特にコイツは。借りを作るならデュークの方にしとけ。グレイグ、お前もだ」 「なんとなく分かったっす」 「嫌だな、私はいつだって双方に益があるようにと考えているよ。もちろん、自分の利益が最優先ではあるけれど」 そう言ってショーンさんはまたにっこりと笑みを作った。 「アールサス様の錬金の才は確かに稀有なものだけれど、私はね、実はウルク君自体にもかなり期待しているのだよ」 「オレに?」 「冒険者ギルドの鑑定士はうちから派遣しているからね。納入する依頼品の質や持ち込む素材の品質がかなりいいと報告を受けているんだよ」 「えっ! 本当ですか!?」 「ああ。まだ冒険者になって日が浅いのに、ちゃんと吟味して持ち帰っているし解体も丁寧だと」 褒められてすっかり嬉しくなった。 アールサス様に高品質な素材を提供しよう、不要な素材は少しでも高く売ろうと思ってるから、解体も採集もついつい丁寧になっちゃうんだよね。でもそれがそのまま評価されてるみたいですっごく嬉しい。 「確かに。ウルクの解体や採取は俺から見てもすげぇキレイだもんな。この前デッカい食人花の解体してた時も、あんなにすげぇ量あるのに、信じられない丁寧さだった」 グレイグも褒めてくれて、ますます嬉しくなる。

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