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第65話 食人花の魔石

お父様がそう請け負ってくれて、オレは思わずめちゃくちゃニヤニヤした。日が浅い割に、っていう注釈付きって事はまだまだなんだろうけど、それでも嬉しい。 「ふむ、繊維の太さと層から見ると本当にかなり年期の入った大物の個体だね。炭化した部分もかなりの高品質だ。できるだけ多くギルドに納入されることを願うね」 「大量にあるんで、最終的には結構たくさん納入できるとは思うんですけど」 「それはありがたい。……おっと、これは……種子か!」 「はい。三十個以上採取できたと思います」 「すごい数だ。グレイグの予想通り、捕食した後だったんだろうね」 「あの……食人花ってやっぱり人を食べるんですか……?」 ふと怖くなって聞いてしまった。名前からして、捕食したって言われると、どうしても怖い想像しちゃうんだよね……。 「ふふ、人を捕食しているところが観測されたからそういう名前がついているが、肉食なだけで魔物でもなんでも食べるよ。だからこの個体が人を食べたかどうかは不明だね」 「ソウデスカ……」 どっちにしても怖い。 「こっちは麻痺液と……毒液、消化液か。うむ、どれも不純物が少なくうまく採取できているね。合格だ」 「ありがとうございます!」 「やはりかなりの年月を経た個体のようだね。液の濃度が高く品質が非常に高い。これだけの素材を採取できるほどの大物なら、魔石もあったのでは?」 ショーンさんの鑑定にびっくりした。やっぱりショーンさんって凄いんだ。 液の濃度とか、繊維の層とか太さとか、そんな鑑定方法まであるんだなぁ。オレにはそんなことまで分からなかったから、こればっかりは経験を積んでいくしか無いんだろう。 「あったのはあったんですけど、その、売る気はなくて。鑑定だけお願いしようと思ってたんです」 「受付に持って行く必要など無いよ、私が今ここで鑑定してあげよう。とりあえず見せて貰おうか」 オレはグレイグと顔を見合わせた。 グレイグがおずおずと魔石を取り出す。それは春の草原みたいな色の、綺麗なでっかい魔石だった。 「これは……素晴らしい」 「すげーな! 本当に売らねぇのかよ。しばらくは遊んで暮らせるくらいの金が手に入るぜ!」 マスター達ふたりの目の色が変わって、思わずうっと息を呑む。でも、これはもうグレイグの物だからオレが口を挟む問題じゃない。 グレイグが不安そうにオレを見てきたから、オレはできるだけ安心して貰えるように笑って見せた。 「気にすることないよ。グレイグが決めていいんだから」

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