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第66話 戦えもしねぇくせに
「グレイグが決める? 採取した物はウルクの物になると聞いていたけれど」
オレがそう言うと、ショーンさんが不思議そうに首を傾げる。そんな事まで知ってたんだとむしろびっくりしてしまった。
「えと、基本的にはそうですけど、これに関してはもし魔石が見つかったら山分けって話で倒したから……グレイグが命懸けで獲ってくれた物だし、その、グレイグは売らずに鑑定してその半分の額を他の魔石で払うって」
「すげぇ額だぞ」
「他の魔石で払うのも難しいくらいですか……?」
ベアさんのひと言に、急にグレイグが不安そうな顔になった。でもそんなグレイグには返事をせず、ベアさんはなぜかオレの方にぐっと身を乗り出してくる。すごい怖い。
「なんで半々の取り分にした?」
ギロリと睨まれて、オレは思わず吃った。
「え……と最初は、グレイグは戻りたくなさそうで、でも、オレ、素材が惜しくて……半々なら、って言ったんです」
「? 意味が分からねぇ」
「君が怖い顔で脅すからだろう。まったく……すっこんどいて」
「うわっ」
ショーンさんが間に割って入ってくれて、オレはホッと息をついた。やっぱりベアさんは見た目自体が怖いから、ぐいっと近づいてこられるとついついビビってしまう。
「戻りたく無さそうってことは、いったんは食人花から逃げたという事かな?」
「はい。グレイグがオレだけ逃げろって言うから、本当にヤバいんだと思って……アールサス様に貰った火炎球でダメージ与えて一旦は二人で逃げたんです。でも落ち着いたら、あんなにでっかい食人花ならすごい素材が手に入るんじゃないかって思えてきて」
「グレイグに戻ろうと持ちかけたわけか」
「はい……グレイグは嫌がってたんですけど、だいぶダメージ入ってた気がしたし、経験値も凄そうだし、もし魔石があったら山分けって持ちかけたんです」
「てめぇ、それがどれ程危険な事か……まだ満足に戦えもしねぇくせに」
「ごめんなさい……」
ベアさんの言う通りだった。
あの時の事を思い出して、またジワッと涙が出てくる。オレは「火炎球もあるし」なんて豪語してたけど、ツルがすごいスピードでグレイグに伸びてきた時、オレ、何にもできなかった。
どうやったのか、グレイグが自分で処理して食人花をやっつけてくれたから今二人ともここにこうして一緒に居られるだけで、本当に死んだっておかしくない状況だったから。
「だから泣くなって。……まいったな、勘弁してよベアさん。こいつこの前散々泣いて、やっと立ち直ったとこなのに」
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