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第69話 【アールサス視点】君の護衛が羨ましい
それにしても、ウルクが落ち込む必要なんてどこにもないのに。
「ウルクに悪いところなんて見当たらないけれど……お父様に怒られたの? それとも先生?」
「主にギルドマスター達かなぁ。でもオレが悪かったからしょうがないって言うか。ついこの前オレ、グレイグにすごくすごく危ないことさせちゃったから」
グレイグ。
以前ウルクに聞いたことがある。ウルクの護衛だ。
ウルクと同じ年で、採取に行く時はもちろん、学園でもウルクと一緒に居ることが多い……僕よりもずっとずっとウルクの傍にいる、正直うらやましくも目障りなアイツか。
ただ、ウルクの安全を守ってくれていると思えば感謝もあるわけで、僕はそのグレイグとか言う護衛にとても複雑な感情を抱いている。
「危ないこととは?」
「このところはオレ達、あの向こうの方に見える森の中腹くらいでよく採取してて」
オレ達、という言葉がウルクとグレイグを指している事がなんとなく寂しくて、ちょっと悲しい気持ちになった。
「本来なら森の深部でしか出ないような、おっっっっっきな食人花に出くわしちゃって」
「それは魔物か?」
「はい! 本当にすっごく大きかったんですよ! オレの二倍くらいあって、植物系の魔物なんですけど、緑色のバラみたいな花で、ツタがびゅんびゅんムチみたいにしなって襲ってくるんです」
「ひえっ……」
恐ろしい。ウサギやゼリーみたいなのが襲ってきたのも怖かったが、まさか植物までもが襲ってくるなんて。書物や素材としては充分に理解していた筈なのに、それが現実のことだと初めて実感した。
「グレイグがオレだけ逃げろって言うから、ホントにヤバいんだって思って」
グレイグ、なんと男らしい……! 護衛の鑑だ。僕はグレイグを一気に見直した。
「それで、アールサス様に貰った火炎球を投げつけて逃げたんです。アールサス様! あの火炎球すっごく!!! 効果抜群でした!!!」
ウルクが僕の手をとって、ぶんぶんと大きく振りながら興奮した様子で話してくれる。
火炎球が役に立ったのか! 作ったときは興味本位で使いもしない物を作ってしまった、とちょっと反省したものだが、作っておいて良かった。
いや、ウルクに渡しておいて、本当に良かった……!!!
「役に立って良かった……! しかしウルクは勇敢だな」
そんなに恐ろしい敵に、とっさに火炎球を投げつけるだなんて、僕だったらきっとできない。すっかり感心してそう言った僕に、ウルクは「とんでもない!」と大きく首を横に振った。
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