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第73話 【アールサス視点】僕が目指す錬成物

いつものウルクからは想像が難しかったけれど、弱い魔物ならウルクは剣で一刀両断してた。 僕が作るような練成物が必要になるのはきっと、ウルクが言ってたみたいな強くて普通に戦ったら大けがしたり死ぬかも知れないっていう、格上の魔物に対してなんだろう。 魔物にダメージを与える物。間接的に動きを制限するような物。 逆に、ウルクやウルクを守る護衛の男を癒やす物。 そういう練成物なら、さっき読んだたくさんの書物の中にたくさんヒントがあった。 今まで触れてこなかった書物まで読んだからか、アイディアが溢れてきて止まらない。まずは書物にあるレシピ通りに一度錬金してみて特性を掴んでから、掛け合わせたらどうなるかを探りつつ効果を高めたり新しいレシピを生み出していけば、きっとかなり効果的に魔物にダメージを与えられるものができるだろう。 それに回復系の薬なら、今渡してある分でもかなりの効果が望める。 けれど。 できる事なら傷すらつけたくないんだ。 剣や鎧に加護や付加効果をつけるか? いや錬金術で付けられる加護なんて、防具で隠れている部分は守れても体が露出している部分には効果がない。フルフェイスの全身鎧なら守れるだろうが、護衛の男はともかくウルクのあの体では動くのも難しいかもしれない。 軽量化をつけるか? いや、動きを制限してしまうのには変わりがない。 「……」 しばらく考えて思いついた。 そうだ、とんでもなく高品質なアンダーウェアを錬成すればいいのかもしれない。武器や防具に比べれば、布を作ることは錬金術では難易度が低い。 動きを邪魔しない伸縮性の高さと薄さ、軽さ、丈夫さを持った布ならば、研究すればきっと作ることができる。 布自体の性能を極限まで高めて、そこに防御力や回復を高めていくような効果をつけていきたい。 その時、ポフ、と小さな音を立ててハイポーションが出来上がった。 うん、いい出来栄えだ。 次はモンスターを眠らせるような、眠り薬を作りながら考えよう。お母様がよく眠れるようにと眠り薬は大量に作ってきたから、これも目を瞑ってたってできる。 ……お母様は助けられなかったけど、ウルクだけは守って見せる。 「今の僕なら、きっとできる」 声に出していってみたら、本当にできる気がしてきた。 お母様が死んでしまってからは、後悔の中で作り続けてきた薬の数々。 今更すべての病を治癒できるような万能薬を作り上げたとしてもお母様が返ってくるわけではない。心のどこかでそんなやるせなさを感じながらもがむしゃらに錬金に打ち込んできた。 でも、今は違う。 僕が頑張れば、ウルクの危険を減らせるかも知れないんだから。 そう思うと今までとは違うやりがいを感じて、体の奥底からふつふつとよくわからないエネルギーが沸いてくるようだった。

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