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第74話 楽しみで仕方がない

「おいおい、ご機嫌だなぁ」 「そりゃあもう!」 グレイグが呆れたみたいな声を出す。 でも、これは仕方ないと思うんだよね。だってご機嫌にならないわけがない。アールサス様があんなにオレを心配してくれて、しかも欲しい素材の一覧までくれたんだから。 「欲しい素材の一覧をくれたってさ、信頼してくれてるって気がするじゃん」 「はいはい。だからって無理すんなよ。アールサス様にも言われたんだろ」 「うん!」 「つーかコレ、魔物からしか獲れねぇ素材、結構あるぞ」 やれやれ……と言いながらも協力してくれるグレイグ。結局優しいんだよなぁ。 「大丈夫。危なそうなのは買うから。この前ポーション売ったお金が結構あるんだよね」 「ならいいけど。つーか、市場で露店開くのっていつだった?」 「今週末の休みの日だよ。何を売ろうかって考えるだけでなんかドキドキしちゃってさ、興奮してなかなか寝付けないんだよこの頃」 「ガキか」 ……なんてグレイグに笑われてしまったけど、今日も今日とてオレは寝る間を惜しんで作業に明け暮れていた。そう、正確には寝付けないというより、寝る時間がなかなか取れない、という方が正しい。 でも正直に言うとグレイグに怒られそうだったから、つい濁しちゃった。 なんせ、やる事も考える事も多すぎる。 まずはアールサス様からもらった『欲しい素材リスト』を取り出して、今日手に入った素材をチェックしていく。品質値が高いものと付加効果がついたものは個別に記入して、他は数だけカウントしてマジックバッグに詰めていった。 一定の品質値があるものは重複してても一応は保管だ。アールサス様がいらないって言った分だけ売ればいいんだから。 実はマジックバッグを増設しちゃったんだよねー。バッグに余裕があるって素晴らしい。 こうやってリストを埋めていくと、素材が揃ったものやあとひとつで揃う、という物も分かってくる。 「明日、採取に行く前に買い物してもいいかもな」 何種類か揃ったら、マジックバッグに詰めて学園でアールサス様に渡したっていい。 「アールサス様、学園でオレに会うのは嫌じゃないって言ってたもんね」 へへ、と嬉しくなってしまう。 最初に会った時の仏頂面が嘘みたいに、このところのアールサス様はオレに優しくしてくれる。表情だってすごく豊かになって、笑った顔やすねた顔、ちょっと悲しそうな顔や心配そうな顔も見ることができたし、色んな仕草や錬金するときの真剣な顔なんて、本当にうっとりするほどだ。

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