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第79話 真っ赤なアールサス様、初めて見た

アールサス様がまだ扱った事がない付加効果を積極的に集めておけば、いざという時に役に立つんじゃないかと思ったんだよね。 ってわけでオレは今、重複を避けるためにアールサス様が既に獲得済みの『付加効果一覧』が欲しい。だけど給仕の人が出入りする、誰に聞かれるか分からないような場所で聞くのはちょっと憚られる。 うーん、と悩んでから、オレは席を立った。 「アールサス様、ちょっと失礼します」 「?」 キョトンとするアールサス様にゆっくりと近づいて、給仕の人が下がった隙にそっと耳打ちする。 「アールサス様が今覚えている『付加効果』を一覧にして、オレにくれませんか?」 「!!!!!」 ガタッッッと大きな音がして、アールサス様が椅子から飛び退いた。 びっくりしてアールサス様を見たら、顔が真っ赤になっている。こんなアールサス様、初めて見た。 「ご、ごめんなさい。くすぐったかったですか?」 「い、いや、だって」 あ、そっか、貴族ってコソコソ話しないのかな。……いや、むしろ貴族こそ密談するもんじゃないの? 内心?マークが飛び交うけど、耳を押さえたまま真っ赤な顔でプルプルしてるアールサス様を見たら反省するしかない。 アールサス様が慣れてないだけのか、貴族はこんな感じの密談はしないのかは分からないけど、二度とアールサス様のパーソナルスペースは侵すまい、と決意した。 「すみませんでした……!」 「違うんだウルク、謝らなくていい。驚いただけで、嫌だったわけではなくて」 一生懸命にオレを気遣ってくれるアールサス様の姿に申し訳なさが募る。また気を遣わせてしまった。このところオレ、アールサス様に気を遣わせてばかりかも知れない。本当に反省だ。 次は気をつけるとして、肝心の伝えたい事は伝わったんだろうか、と心配になる。仕方なく、オレは確かめる事にした。 「こっそりお伝えしたい事があっただけなんです。あの、さっきのって聞こえました?」 「聞こえた……と思うが、すまない、驚きすぎて覚えてない……」 アールサス様は困ったように言って小首を傾げる。 そりゃそうだよね。あれだけびっくりしてたら、そりゃ聞こえてたって内容は頭に入らないよね。 納得しつついつもポケットに入れてるメモ用紙とペンを取り出して、サラサラと書いていく。最初っからこうすれば良かったんだ。まぁ、紙に残るって言うリスクはあるけど、そこは文言を工夫するしかない。 「すみません、これをお願いできますか?」

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