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第81話 明日も会えるか?

「今日は突然お時間をいただいてしまってすみませんでした。でもオレ、すっごく楽しかったです!」 「僕もだ」 急に訪ねたのにそんな風に言ってくれるアールサス様、本当に優しい。 オレの教室の方が遠いから、挨拶を済ませて踵を返し急いで走り出そうとしたオレの腕を、アールサス様が急にグッと掴んだ。だけど、握力弱めっぽいアールサス様と、このところ採取と戦闘で鍛えまくったオレの腕の振りの勢いだとどうしても後者が勝る。 「あっ」 ヤバい、振り払ったみたいな感じになっちゃったかも。 慌てて振り返ったら、オレの腕を取り逃した自分の手を見つめて悲しそうにしてるアールサス様が目に入った。 マジでヤバい。 所在なさげなその手を両手で握ってアールサス様を見上げ、しっかりと目を合わせる。言外に、振り払ったわけじゃないですよ、と告げたかった。 「すみません、アールサス様」 「いや……その、また明日も会えるか?」 「明日? はい、特に用事はないので大丈夫ですが」 「あ、その、僕も渡したい物があるんだ」 「はい! じゃあオレも明日も何かお渡しできるよう今日の採取も頑張っときますね!」 「ああ、楽しみにしている」 そう言って、アールサス様が本当に綺麗に笑ってくれた。 明日も渡せる素材があるといいな。アールサス様も喜んでくれるし。そんな事を思いながら、オレはスキップしたいような気持ちで教室へと戻ったのだった。 *** その週末。 いよいよ初陣を迎えたオレは、市場の露店で出店準備をしていた。商業ギルドのショーンさんが用意してくれた、一日限りの露店だけど、やっと、やっと、自分で店が出せるんだ。 「ニヤニヤすんなよ。俺ならそんな能天気そうなヤツから、付加効果満載の怪しい物は絶対に買わねぇぞ」 「しょうがないじゃん、嬉しいんだもん」 早速グレイグからお小言を貰ってしまった。 「この頃のお前は気が緩みすぎだ」 グレイグが不機嫌な顔で言う。 確かに顔はニヤつきがちかも知れない。 学園では採取物や錬成物の受け渡しのために、毎日のようにアールサス様とお食事できているという夢のような状況だし。 アールサス様は会うたびに『ウルクの役に立つんじゃないかと思って』なんて言いながら錬成物をくれるし。 しかもこうして自分の店は出せるし。 浮かれない方がどうかしてる。 でも、戦闘も採取も油断なくこなしてるし、グレイグ先生の言うこともちゃんと真面目に聞いてる。顔は緩んでても、気は緩んでないと思うんだけどなぁ。

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