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第84話 上々の滑り出し
「香水の付加効果も面白いですよ。『爽やか』とか『うっとりする』とか、あとコレも面白くないです? 『魅惑の香り』ってオレ、見た時ちょっとびっくりしましたもん」
「やだ、どんな香りなのソレ」
お姉さんは楽しそうにくすくすと笑ってくれる。ギルドの受付でもいっつも優しくて、オレも大好きなお姉さんだ。
「オレも使ってないから分かんないけど、多分人によって感じ方が違うんじゃないかなぁ。その人にとってすっごく好きな香りに感じられるんだと思う」
「そうかもね。面白そうだから買っていくわ。並んでる物、他にも見せてね」
「はい!じっくり見ていってくださいねー!」
通りすがりのお兄さんの対応をしている間、お姉さんは本当にじっくりとお店の品々を検分していく。小さな露店だけど棚を設置したり小さな物をたくさん並べたり色々と工夫して数は結構たくさんおいてあるから、見応えは結構あると思うんだよね。
オレの説明をひと通り聞いてから真剣に迷っているお兄さん。押し売りしたいわけじゃないからニコニコしつつその姿を眺めていたら、今度は受付のお姉さんから声がかかる。
「お会計お願いするわ」
お姉さんの方を見てみたら、その腕にはびっくりするくらいたくさんの瓶が抱えられていた。さっき勧めた香水やクリームを買い占めそうな勢いでチョイスしてる。
「えっ、こんなに買ってくれるんですか?」
「ええ。品質や付加効果はラベル通りで間違いないようだし」
「あっ、そうか。お姉さんはそりゃあ鑑定バッチリですもんね」
「もちろんよ、商業ギルドで鍛えているもの。それにしてもよくこれだけ面白い品を揃えたわねぇ。どれも試したいから友人達にもお土産に買って、効果を色々分かち合おうと思って」
「わぁ! それ、後で感想聞かせてくださいね! 評判良かった付加効果は、オレ、頑張って探しますんで!」
「あら、ウルク君が素材を探しているの?」
「はい、オレけっこう面白い付加効果がついた素材集めるの得意なんです。それを使って練成して貰えば、効果付きのができあがる可能性は上がるんでしょ?」
本当はアールサス様なら一度練成したことがある付加効果は確実につけられるんだけど、お姉さんといえどそれを言うわけにはいかないもんね。
「ええ。じゃあ次にギルドに来てくれた時に感想を言うわね」
「楽しみにしてます!」
言いながら買ってくれた物を手早く柔らかい布に包んで紙バッグに詰めていく。するとお姉さんがびっくりしたみたいな声をあげた。
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