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第85話 お姉さんの秘密
「まぁ! ウルク君ったらおしゃれな紙袋に入れてくれるのね」
「その場でバッグに入れない人限定ですけど。男の人でも女の人でも持ち歩けるデザインって思ったらこれになりました」
「悪くないセンスよ」
パチンと華やかにウインクして、お姉さんは軽い足取りで帰って行った。すごく喜んで貰えたみたいで嬉しい。見送ってたら振り返って手を振ってくれる。オレも笑いながら手を振り返した。
「あのっ!!!」
「はいっ!!!」
突然声をかけられて、思わずおんなじくらいの声量で返事をする。声の方を見てみたら、さっきから買おうかどうか……と迷ってた男の人だった。
「今の人! 商業ギルドのボニータさんだろ!?」
「あ、はい、そうです。美人で優しくて、いっつもニコニコしてて……素敵な方ですよね」
素直な感想を言った途端、お兄さんはうんうん、と深く頷いてオレの肩をポンポンと叩く。
「お前がいい商人だってのはよーっく分かった」
「えっ?」
「オレもまだ日が浅くて詳しくはないんだが、ボニータさんといえばこの市場じゃ有名人らしくてさ。初めて出店した露店にはああやって気まぐれに現れて、品物ぜーんぶ鑑定して、紛いモンがあった日にゃ登録取消しされる上に絶対零度の対応されるらしいぜ」
「ひええ」
そんな怖い人だったの!!!???
「周り見てみろよ。皆感心した目で見てるだろ」
「え……」
周囲を見回したら、確かに道行く人も周囲の店主達も一斉にこっちを見ていた。
「良かったなぁボウズ!」
「やるなぁ!」
「オレも後で見に行くよ」
「ボニータがあんだけ買ってったんだ、しばらくは噂になるぞ」
「ははは、目ぇ白黒させてやがる」
「ちょっとオレにも見せてくれ」
色んな人が声をかけてくれたり、笑いかけてくれたり、拍手してくれたり。急に祝福されて嬉しいやら驚くやら。そうこうしてるうちに色んな人がお店に来て、バタバタ対応してる間にあっという間に時間が経って、オレが借りている日中の時間も終わりに近づいてきた。
さすがに手が回らなくて、途中からはオレが接客してグレイグが会計と梱包をしてくれるという連携プレーで乗り切ったから、すでにオレもグレイグもクタクタだ。グレイグが一緒にいてくれて、ホント良かった。
何度も何度も品出しして、ついにはオレが採取した素材だとかアールサス様から買い取った物の中でも人を選びそうな品まで店頭に並べ始めてる。そろそろ店じまいしなくちゃかな……と懐中時計を見ていたら、また声がかかった。
「もう店じまいする気かい?」
「!!!」
うわぁ……すっごい、美形なお兄さん……!
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