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第86話 関係性が謎な二人連れ
紫水晶みたいな瞳も褐色の肌もここらでは見ない配色だし、金の緩やかな短髪をターバンで巻き上げてるし、服装も白のローブに綺麗な色とりどりの装飾品をジャラジャラつけてて、いかにも民族衣装って感じだ。
鼻筋が通った美貌は、アールサス様とは印象が違う野生み溢れる精悍な美形だった。ローブで隠れてるけど、脱いだらバッキバキに鍛えてそう。
なんて思ってたら、その美形の後ろから金髪碧眼の王子様フェイスが突如顔を出した。ターバンのお兄さんは20代だろうけど、この王子様フェイスはまだオレとそう変わらない年に見える。
その王子様フェイスはオレを見るなり、あからさまに嫌そうな顔をした。
「あっ、コイツ学園で見た事あるよ。親が豪商でいかにも金持ってますって感じのいけ好かないヤツ……!」
おお……!すっごくストレートなご意見を賜った。
ていうか学園で見た事あるって言うならやっぱり似たような年齢なんだな。ちなみにオレは見た事ない。グレイグをそっと見てみたけど、グレイグも目線で「知らねぇ」と告げてきた。おんなじ学年じゃないのかも知れない。
「君、いきなり失礼な事を言うようならついてこないでくれ。商談の邪魔だ」
「ご、ごめんなさい……」
王子様フェイスはターバンのお兄さんに叱られてシュンとしている。親しいって感じの呼び方でもないし、さりとて知らない仲でもないみたい。この二人、どういう関係性が全く読めないな。ま、関係ないから別にいいけど。
ターバンのお兄さんはオレに優しく笑いかけてくれる。
「悪かったね。お詫びに何か買っていくよ」
「別に気にしてないんで大丈夫ですよ。本当に気に入った物を買って欲しいんで、お詫びに、っていうのはナシで」
オレはにっこり笑ってそう返した。オレが『親が豪商でいかにも金持ってそう』なのはその通りだし、『いけ好かないヤツ』と思ってる人も多いと思うし。いちいち気にしてたら胃に穴があいてしまう。
オレの返しが気に食わなかったのか、王子様フェイスがさらに嫌そうな顔をするけど、こういう人はお客様になってくれるわけでもないから、マジでどうだっていい。
オレはお兄さんを見上げてちょっとだけ眉を下げた。
「ご覧の通り店じまいしようかなってところだったんです。今日は思ってたよりもたくさんお客さんが来てくれて、ちょっと品切れ気味っていうか……もうあとはオレが採取した素材とか、クセの強い錬成物しか売ってないんですけど……それでも良かったら見ていってください」
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