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第89話 【グレイグ視点】商売の話をしていいかな

「それよりも、お兄さんやっぱり異国の方なんですね。お兄さん格好良いし、そのターバンとか服とかも変わっててすごく目を引くなって思ってたんですよ」 「ありがとう。実はチャジードから来ているんだ。商談の時には分かりやすく目立つ格好をしている方がこうして話も弾むしいいと思っていたんだけど…… 今回は悪目立ちしすぎたみたいで、商売に関係ない人物まで引き寄せてしまったようだ。不愉快な気持ちにさせて申し訳ないよ」 異国の男はそう言って困ったように笑う。 「知り合いじゃないんすか?」 聞いてみたら、とんでもない、みたいな顔で首を横に振った。 「今日初めて会った子だね。昼くらいに声をかけられたんだけど、それからずっとついて来て困ってたんだ。君達は知り合いなのかな。少なくとも彼の方は君を知っていたようだけど」 問われたウルクだって困り顔だ。 「オレは見た事なかったけど、向こうは知ってるみたいなんで、多分同じ学園に通ってるんだと思います。先輩なのかなぁ」 「俺も知らねぇ。とりあえず迷惑で嫌なヤツだって事だけは分かった。関わり合いにならねぇように気をつけようぜ」 「うん」 絡まれたらどうしようもないが、できるだけこちらからは関わりたくない雰囲気のヤツだった。はっきり言うと、面倒くさそう。 「さて、やっと邪魔もなく話せるようになった事だし、商売の話をしてもいいかな?」 「はい、もちろん」 ウルクはニコニコしてるけど、俺はなんだかこの男の言い方に引っかかりを覚えた。 他の人は「買う」「買わない」っていう、ストレートな言い方をしてたのに、この異国の男だけは一貫して「商売の話」なんて言い方をする。単にこの人の国ではそういう言い回しをするだけなのかも知れないが、何か裏があるんじゃないのかと疑いたくなってしまう。 「私の名はカペラ。色々な国を巡りながら面白そうな物を仕入れては次の国で売買しているんだ。君とは面白い仕事が出来そうだから、懇意にしてもらえると嬉しいね」 カペラと名乗った男が右手を差し出してくる。もちろんウルクは愛想良く握手した。 「ウルクです。こっちはオレの友人で護衛もしてくれている……」 ウルクが俺を見上げてくるから、俺も愛想良く挨拶する。友人だ、と付け加えてくれたのが地味に嬉しかった。 「グレイグです。よろしく」 「おお、君は護衛だったのか。悪さをするつもりはないから安心して」 「はい」 もちろんそう言われたからと言って警戒を解くわけにはいかないが。

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