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第96話 不安だけど

なんだか嫌な予感がする。 その気持ちは日に日に強くなっていった。 何か特別な事があるわけじゃない。 お父様にも相談してみたけど、やっぱり特に気になる噂は流れてないみたいだし、アールサス様のところには相変わらずパネトーラ様が日参してるらしい。 特に変な話があるわけでもなく、オレの話が出ることも少なくて、ただ友人として親しくなっていくだけ。 それを止められるはずもない。お父様も、気にしすぎるなって言ってたし……ちょっとしたきっかけを捉えてつながりを持とうとする事なんて貴族にとっては普通のことだって言ってたし。 そうだよね、きっと大丈夫だ。 先週の日曜日に露店をした時だって、カペラさんはまた店をのぞきに来たけど、別に不審な様子もなかった。パネトーラ様もくっついてなかったし、たくさん買ってくれたいいお客様なだけだったんだから。 自分に言い聞かせながら、オレはアールサス様のお邸へと近づいていく馬車に揺られていた。 久々にアールサス様のお邸で時間を気にせずに一緒に居られるんだから、いくら心配だからってアールサス様に失礼な事言わないようにしないとな。 そう決意しつつ、馬車を降りる。 「ウルク! 待っていたよ」 邸に入るなり、アールサス様が嬉しそうに駆け寄ってきてくれた。待っていてくれたみたいで嬉しい。 このところ学園でもいつも昼食を一緒に取っているし、出会ったばかりの頃が信じられないくらい優しくして貰っている。 いや……違うか。アールサス様はもともと親切で優しい人だったんだ。 お母様を亡くしたばかりで傷心の時に突然男のオレが婚約者だって言われて混乱して、しかもオレの態度も相当悪かったからこじれてしまっただけ。 アールサス様との関係が改善できて本当に良かった。 可愛らしく笑うアールサス様を見て、つくづくそう感じる。 「待っていたんだ! 僕の部屋に行こう、見せたい物があるんだ」 「こら、アールサス。まだ挨拶もまだだろう?」 アールサス様のお父様、儚げな美貌のエルトライク伯爵が優しくアールサス様を窘める。そのエルトライク伯爵の手をお父様がそっとおさえた。 「いいではないですか、アールサス様のご様子から見ると、どうしてもウルクに話したいことがおありのようです。我々も相談せねばならない事も多いですし」 「ありがとうございます!」 お父様に素早くお礼を言ったアールサス様に手をとられて、上階のアールサス様の部屋へとつれて行かれた。 「これ! コレ見て!」

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