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第97話 不思議な練成物

部屋に入るなり、待ちきれないようにアールサス様はオレの目の前に何かを掲げる。 ジャーン! とでも言いたげな顔が可愛い。 見せられたのは、なんとも不思議な物だった。 「これは……赤ちゃんの服?」 それにしては飾りも素っ気も無いし、ボタンとかすらない。こんな服初めて見たけど、赤ちゃんの服ってこんななの? 前世の記憶にしか一番近い物が思い当たらない。これはアレだ……肌色の全身タイツっぽい感じ。でも、赤ちゃんサイズと言っても過言じゃないほどにちっちゃい。 「大人用……というか、僕やウルクでも充分に着ることができるサイズだよ。全身を守れるようなインナーを作りたいと思って、今研究中なんだ」 「これ、オレが着るサイズ!?」 「すっごく伸びるんだよ。ゴムやスライム、バネの木とかの伸びる素材をふんだんに入れてあるから心配しないでも大丈夫」 「あ……なるほど」 本当に全身タイツみたいな物を作ろうとしてる訳か。 「よく考えたら火炎球も爆弾も危険物だし、そもそも全身が守られていれば魔物から攻撃されてもケガしなくて済むんじゃないかと思って作ってるんだ」 アールサス様の優しさがすごい……! そして発想もすごい。まさかそんな物を作ろうとしてるだなんて考えもしなかった。 「全身鎧とかを改良するんじゃないんですね」 「だって、あんなの重くて着てられないと思って。付加効果を軽さにひと枠使うのも勿体ないし」 「確かに。オレ、前に全身鎧着てみたことあったけど、全然動けなかった」 「だと思った。それに、これなら使い心地さえ良ければ下着のように普段から着て居られるんじゃ無いかと思ったんだ。僕もこういうのを着ておけば、あんな人数いつまでも護衛につけなくてもいいかも知れないと思って」 「やっぱり護衛が常時張り付いてるのって窮屈ですか……?」 「仕方ないとは思ってる。でも、お金もないのに申し訳なくて……」 学園の中は護衛がつけられないけど、一歩外に出てからはずっと護衛がついてるもんね……。しかも何人も。それはオレも同じだけど、アールサス様だって自由になりたい時もあるんだろう。 さらに、お金が無い、なんて事をアールサス様が気にしてるのが可哀相すぎる。 もうちょっとしたら、アールサス様の練成物で定期的にお金が入るようになるんだけどな……とアールサス様を見上げたら、アールサス様はもうそんな事は忘れたみたいに期待に満ちた目でオレを見つめていた。 「着てみてくれる?」 「えっ?」

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