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第100話 使い心地を試してみたい
そそくさと服を身につけたら、アールサス様も安心したようにこっちをまっすぐに見てくれた。
「ああ、服を着たらもう、インナーを着ているかどうかもパッと見分からないな。我ながら見た目は上出来だ」
「見た目だけじゃないですよ! 着心地最高……っていうか、着てる感じが全くないです。意外に蒸れないし、ベタつく感じもないし」
「一応浄化作用もある筈なんだけれど、これは体を動かしてみないと今ひとつ効果が分からなくて」
「じゃあ、早速採取に行ってみます?」
「うん!!!」
元気よく返事をしてくれたアールサスを連れて、ウキウキと草原へと向かう。このところはアールサス様も慣れてきて、ちょっとずつ奥へと進んでいく事ができていた。
今日はインナーの性能を試したいっていうのもあるから、草原の奥の方にある、湖まで行ってみようかな。
「アールサス様、今日はちょっとだけ遠いんですけど、綺麗な湖があるから、そこまで行ってみませんか?」
「湖! 行ってみたい!」
これまたいいお返事だ。
「じゃあ、ちょっとだけ急ぎましょう。走りますよ!」
「えっ!?」
アールサス様の手をとって走り出す。インナー越しでも、アールサス様の手のひらは、不思議とあったかく感じられた。
アールサス様の速度に合わせて走っていくけれど、ほどなくアールサス様の息が上がってくる。いつも屋敷の中に篭りっきりのアールサス様にとって、草原を走るだなんて考えもしなかっただろう。
「待っ……て……」
アールサス様が音を上げたから、すぐに止まってあげた。
「ごめ……」
はぁはぁと荒い息の中からアールサス様が謝ってくれるけど、心配しなくてもいつもよりはずっと奥まで進んでいる。
「大丈夫、アールサス様が頑張って走ってくれたから、いつもよりもずっと奥まで来てますよ! 息が落ち着くまでゆっくりしててください」
「ありがと……」
ありがとう、なんて。
走るのなんて苦手だろうに文句も言わずに一緒に走ってくれて、こうして微笑んでくれるだけでこっちがお礼を言いたいくらいだ。
たくさん走って紅潮してる頬や額にも玉のような汗が次々に浮かんで、見る間に滴り落ちていく。オレはポッケからハンカチを取り出して、アールサス様の麗しい顔に浮かぶ汗をそっと拭った。
「ふふっ」
くすぐったそうにアールサス様が笑う。
「こんな風に汗を拭って貰うなんて本当に久しぶりだ」
「あ、ごめんなさい。嫌でした?」
「ううん、嬉しい」
良かった、とホッとするオレの目の前で、アールサス様が草原に仰向けに寝転がった。
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