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第101話 手を取り合って

「アールサス様?」 「こんなに走ったのも久しぶり……! 走るのって意外と気持ちがいいんだな」 その満ち足りたような顔を見ていたら、なんだかこっちまで満ち足りたような気持ちになってきた。 「草原に寝転がったのも随分久しぶりなんじゃないですか? 結構奥まで来てるからここでも充分いい素材が取れますし、オレはしばらく採取してますからゆっくりしててください」 アールサス様を日差しから守るように位置どりし、周囲に気を配りながら採取しようと足元に手を伸ばす。その手を、アールサス様の白い手がおもむろに掴んだ。 「湖まで、あとどれくらい?」 「もうそんなにかからないですよ。歩いても30分とかそこらだと思いますけど」 「なら、頑張る」 まだ息が完璧には整っていないのに、アールサス様は起き上がってパタパタと服を叩き始めた。 「……はい! 湖もすごく綺麗だから、湖でゆっくりしましょうか」 アールサス様が頑張るって言うなら、オレに否やがある筈もない。誰だってやる気があるうちに、たっぷり歩くフェーズは終わらせておいた方がいいもんね。 「じゃあ、行きましょう」 「手、繋ぎたい」 「はい!」 手を差し出したらすぐにアールサス様の手が乗ってきて、柔らかくってあったかい手を感じられるのが嬉しい。その手を引いて歩きながら、オレはアールサス様に気になった事を聞いてみた。 「なんか、温度も感じるし柔らかさとかも普通に感じるんですね。素肌と何も変わらない」 「うん、今はまだ薄くて軽くて信じられないくらいよく伸びる布が体を守ってる感じなんだ。だからあんまり違いが分からないのかも。まだ僕『無効』系とか『遮断』系は持ってないから」 「オレもまだ見た事ないかも。『無効』系とか『遮断』系ってどんなのがあるんだろ」 「たとえば無効系なら『刺突無効』とか『魔法無効』とか、遮断系だと確か『感覚遮断』や『熱遮断』とかが有名かな。確認できてるだけでもかなり色々あるんだよ。錬金術の本に書いてあった」 「へぇーすごい!!!」 流石にチートだ。そんなの付加効果でついてたら、無敵な気持ちになっちゃいそう。そんな事を考えていたら、アールサス様がちょっと困ったような顔をした。 「でもかなりのレア素材で相当珍しいらしいし、錬金しても効果として残りにくいって書いてあった」 そりゃそうか。そんなのホイホイできたらもっと冒険者も危ない職業じゃなくなってるだろうし、やっぱりそう簡単にはいかないんだな。でもそんなレア素材なら見つけてみたい気もする。

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