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第104話 夢のように幸せだ

ここでなら自分が納得できる素材を吟味に吟味を重ねて採取できる。アールサス様にとっても貴重な時間だ。 「ほら、草原にはない水草とか湖の土とかもふんだんにあるし、あの辺とか、水辺でしか採れないレンディ草とかザリの花がいっぱいありますよ。アールサス様、欲しがってたでしょう?」 「……うわ、本当だ……!」 ぱあっとアールサス様の顔が輝いた。 オレも本気で採取しようとスキルを起動させたら、湖の周囲が色とりどりに光り始めた。 薬の素材になるものは淡い緑色。 毒があるものは薄い紫。 水系は水色。 鉱石系はグレー。 木材系はブラウン。 他にも色々な色がひしめき合っている。オレはその中でも大きな光を放っている方へと足を進めた。素材の性質を表すのが色ならば、素材の質の高さは光の大きさで表されるようだった。 オレが高品質な素材を多く集められるのは、このスキルがあるからだ。 他の人も鑑定スキルは持っているはずだけれど、採ってくる素材は質がまちまちだから、もしかしたらこれはオレの特殊なスキルなのかも知れない。 「うわ……」 この一帯、質が良い素材がひしめき合ってる。土壌がいいのかも知れない。 「アールサス様! このあたり、すごく品質がいい素材が揃ってますよ!」 「えっ……うわぁ! 本当だ!」 アールサス様も鑑定眼はスキルとして所持している。このあたりの素材の品質の良さに感動したみたいだ。 「こっちのレンディ草、品質90って凄くないですか? あ、でも付加効果は『まろやか』だ。あはは、あんまり使い道なさそう」 「でもまだ持ってない付加効果だから、採取しておこう。スイーツとか飲み物を練成するときにはいいかも知れないしね」 「確かに。……あっ、こっちには品質80前後のザリの花がいくつもある! アールサス様、付加効果は様々だから選び放題ですよ」 「ふふ、本当だ」 アールサス様が楽しそうに笑う。 「こんな風に話し合いながら採取できるの、楽しいですね」 思わず口をついて出てきた言葉に、アールサス様がさらに笑みを深める。 「うん、本当に楽しい。僕、こんな風にウルクと時々採取に来るようになってから、よく眠れるようになったしご飯も美味しく感じられるようになったんだ」 「えっ……」 「お父様にもこの頃顔色が良いって褒められるんだ」 オレの手を取ったアールサス様が、オレの目をのぞき込んで囁くように言う。 「ウルクのおかげだね。本当にいつもありがとう」 アールサス様の瞳も、その後ろに見える湖もキラキラと光っていて、夢のように幸せだと思った。

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