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第105話 夢は長くは続かない

夢見心地のままアールサス様の部屋へと帰り着いたオレ達は、お互いが採ってきた素材を広げながら和気藹々と何を作るかを話し合っていた。 ああ、楽しい。幸せすぎる。 そんな風に幸せに浸ってたって言うのに、突然アールサス様が放った発言に、僕の動きがピタッと止まった。 「そう言えば、昨日もパネトーラ様が来てね」 「……またですか」 「そんなに嫌がらないでやって欲しい、僕は友達が出来て嬉しいくらいなんだから」 そんな事言われても。ついつい眉根が寄ってきてしまうのを抑えられない。そんなオレの顔をのぞき込んで、アールサス様が可愛らしく笑った。 「ヤキモチ焼いてくれてるんだったら嬉しいけど」 「……」 さすがにちょっと恥ずかしくなってくる。謝ろうと思って顔を上げたとき、アールサス様がびっくりするようなことを言ってきた。 「実はさ、ウルクが嫌がるかなと思って言って無かったことがあるんだけど、ちょっと困ったことがあるんだ」 「えっ、なんですか? まさか、パネトーラ様に関係あることですか?」 「うん……このところパネトーラ様から、「練成物を市場で売るよりも安く売って欲しい」とか、「錬金術師を紹介して欲しい」とか、ウルクに言ってくれないかってやんわりお願いされることが増えてきて……」 「!!!」 やっぱり!!! アイツめ!!!! 怒りが込み上げてくる。アールサス様の素直さを利用して、オレに言うことを聞かせる気か! 「アールサス様、アールサス様が錬金術師だってこと、絶対に悟られちゃダメですよ!?」 「わ、分かってる」 オレがあんまり勢い込んで言うモノだから、アールサス様は若干のけぞりながらオドオドと答える。 「ちゃんと錬金術師だってことは隠してるし、ウルクにも伝言なんてできないって断ってるよ。……でも、あんまり何度も言われるから、さすがに断るのが申し訳なくなってきて」 「アールサス様が申し訳なく思う必要なんてないですよ……! 向こうが勝手に言ってくるだけでしょ?」 やっぱりパネトーラ様は下心があってアールサス様に近づいたんだと思う。本当に嫌なヤツだ。 「どんなに頼まれてもパネトーラ様にだけ練成物を安く売ることも、ましてや錬金術師を紹介することもできないですし……アールサス様、オレ、直接パネトーラ様にお断りしましょうか?」 「いや、やめておいた方がいい。ウルクが不愉快な思いをするかも知れないし」 「パネトーラ様が割と爵位によってあからさまに態度を変える人だというのは知っているので大丈夫です」

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