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第106話 何言ってんだこの人
「……はっきり言うなぁ」
アールサス様が苦笑する。
パネトーラ様の差別的な態度はそりゃあもう有名だ。はっきり言うどころか、むしろオブラートに包んで言ってあの言葉だと思って欲しい。
貴族じゃ無ければ人間じゃ無いってレベルで会話すら嫌がるくらいなのに、なぜか他国の商人であるカペラさんにベタベタしてたのが解せないが、やっぱりアレか、顔がいいからか。
内心むかむかしていたら、アールサス様が困ったように笑ってこう言った。
「でもやっぱりウルクに嫌な態度を採られたら僕が悲しいから、ウルクは直接話さなくてもいいよ」
「……はい、でもアールサス様にずっとお断りして貰うのも申し訳なくて」
「それなんだけど、僕に考えがあるんだ」
アールサス様がオレを落ち着かせるように微笑んでくれる。オレのことを考えてくれてるんだなぁ……って嬉しく思ったのに。
「僕が別の錬金術師に作って貰うって言って、代わりに似たような練成物を渡すってのはどうかな」
「……は?」
素でそんな声が出た。
「そしたらウルクも困らないし、僕もパネトーラ様に断らずにすむ」
「……何言ってるんですか。本末転倒じゃ無いですか」
地を這うような声がでた。
「い、いや、でもパネトーラ様は質のいい練成物が欲しいだけだし、僕なら作れるから」
「本気で言ってるんですか」
アールサス様を守るためにオレも、お父様も、アールサス様のお父様も、ギルドマスター達も、グレイグも、皆が頑張ってるって言うのに、何言ってんだこの人。
意味が分からん、とついついアールサス様をマジマジと見つめたら、居心地悪そうに目を逸らした。
「いいアイディアだと思ったんだけど……ダメかな」
「ダメです」
キッパリと言ったら、アールサス様はちょっとだけむっとした顔をする。
「でもパネトーラ様が言うには、ウルクの売値はちょっと高いからお金があまり無い人にとっては手が出ないって……パネトーラ様は、そういう人たちにも安く売ってあげたいんだって」
「はあ!!!???」
思わずでっかい声がでた。
さっきから何言ってんのこの人!? あの男がそんな殊勝なことするわけ無いじゃないか!
「それは立派な志だと思ったんだ。僕が作れば材料費だけで済むし、ウルクにも迷惑にはならないかと思ったんだけど」
「オレは……適正な価格でしか売ってない。むしろ商業ギルドのマスターからこれ以下で売っちゃいけないって言われてるギリギリの、むしろすごく良心的な価格で販売してる」
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