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男が体勢を崩し、その場に倒れ、手が緩んだ隙を狙い、碧人に抱きしめられた。 見知らぬ人に触れられた不快さがあったからなのか、昔から知っている温もりに包まれ、安堵してしまっていた。 「⋯⋯碧人、さん⋯⋯」 「⋯⋯帰ったら、分かるよね⋯⋯?」 一見、優しく聞こえる声。だが、非常に怒っていることが十分に分かる声で、甘んじて、されど少なからず期待した返事をしてしまったのだ。 数日前のことを思い出しても、痛みを和らげることもできないし、それに二度寝もする気にもならない。 みんなが起きるまで朝日でも浴びていようか。 そう思い、起こさないように立ち上がろうとした。 「⋯⋯葵。起きたの」 背後から突如として聞こえた静かな声に少々ながらも驚いた。 「⋯⋯碧人さん」 「おはよう。どこに行こうとしたの?」 何ともない問い。しかし、突然碧人から逃げ出してしまった葵人の耳には、底知れぬ恐怖を覚え、竦んだ。 「あ⋯⋯ぇ、寝られないから、みんなが起きるまで、朝日を浴びていようかと⋯⋯」 「本当に⋯⋯?」 「⋯⋯本当、だよ。⋯⋯碧人さんがいないと僕、何にも出来ないって、今特にそう思うし⋯⋯」 少しも動かない碧人の顔色を窺うように、恐る恐ると言った。 彼は何も言わず、じっと葵人のことを見つめていた。 蛇に睨まれた蛙のように、瞬きすらせず、怯えを交えながらも、葵人もまた彼を見ていた。 何も言わずにいるため、葵人は緊張で、背中にじっとりと汗をかいていた。 長く感じる沈黙の唯一の安らぎは、二人の楽しそうな寝言であろうか。 「⋯⋯そう」 葵人側にいた新に触れようとした手を止まらせるきっかけを口にした。 「葵人が心の底からそう思っているのなら、また"証明"してみせて」 目元を細め、長くて細い指を唇に当てた。 その仕草だけでも、限界を越えていた下腹部が強く反応してしまうのだから、始末が悪い。 「⋯⋯ここで、するの?」 「何を言っているの⋯⋯? どんなところであろうが、証明してみせないと葵のことを赦すのが難しいんだよ」

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