5 / 27
5.
「おかーさま、おかおまっか!」
「おとーさま、いじめたー! おかーさま、かわいそー!」
息を整えている葵人を庇うように、二人がぎゅっと抱きしめてきた。
今の光景は、二人にとって"いじめた"ように見えるようだ。
「おかーさま、いいこいいこ」と新が撫でてくれ、「おとーさま、わるいこ! めっ!」と真が指差して怒っている。
大丈夫、と宥めたいところだが、全力で葵人に味方をしてくれている二人が嬉しくて、上手く声にならないのもあって、事の成り行きを見守っていた。
「別にお母さまのことをいじめたわけじゃないよ。そもそもお母さまがやったことだし。僕はそれに応えてしてあげただけ」
「どーゆことー?」
「つまりは、そうだな⋯⋯。お母さまはお父さまのことが好きだから、したってこと」
真の目線に合わせて膝を着いた夫が、穏やかに笑いかけていた。
聞き捨てならないことを言った。
酸欠状態で反応が遅れてしまったが、ふつふつと怒りが沸いてきた。
子ども達に平気で嘘を吐くだなんて! だから、子ども達の前でしたくなかったのに!
しかし、元々自分が犯した罪だから、どんなに理不尽な条件であっても、碧人に反抗するのはおかしい。
そんな考えがよぎった途端、怒っても仕方ないと気持ちを切り替えて、いつまでも撫でてくれている新に、「ありがとうございます」とお礼に頭を撫でてあげた。
「おとーさま、ごめんなさい。なかなおりのぎゅーして?」
「いいよ」
真を抱きしめた直後、碧人と目が合った。
瞬間、意味深長な笑みを見せつけてきたのだ。
「な、なに⋯⋯?」
「いつどんな時に見ても、葵は可愛いなって」
「⋯⋯!」
急に何を言い出すのか。
冷めかけていた頬が再び熱くなってくる。
「おかーさま、かわいい!」
「えっ?」
「かわいい! かわいい!」
「えっ、えっ?」
撫でていた新と、碧人の腕の中にいた真が駆け寄ってきて、抱きしめてきた。
「「かわいー!!」」
揃って、胸に顔を埋めて言う二人に目を丸くしていたが、やがてふっと笑った。
ともだちにシェアしよう!