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7.
前に、どうしてこの服なのかと訊かれたことがあった。
母親のことが大好きな二人であるから、服まで真似たいと思ったのか、教えてはないはずだが、性別がきちんと分かっているからなのか。
どう答えようかと、少し悩んだ。
新も真も生物上は"男"だ。しかし、それは世間の話で、それに二人は産まれてから一度も外に出たことがなく、二人にとってはこの家の中がこの世の全てだ。
この二人だけには嘘を吐きたくないと思うのは、自分が汚れた世間に染まってしまったからであろうか。
事実を噤んで、二人にとっての、この桜屋敷家にとっては常識であることを言った。
「最初に産まれた新がお父さまと同じ格好で、二番目に産まれた真はお母さまと同じ格好になる決まりがあるのですよ」と。
「まこと、いいなぁ。だいすきなおかーさまといっしょで。あらたも、にばんめにうまれたかった」
「ふふんっ、いいでしょ!」
新に見せびらかすように、両手を広げてその場に回った。
紺色の生地に桜が散りばめられた振袖が、風に吹かれる桜の花びらのように弄ばれる。
知っているがゆえの、無垢で残酷な対話。
どちらが先に産まれようが、同じ轍を踏まされる。
無邪気に笑い合う二人に、込み上げるものがあった。
「新、真」
「んー?」「なーにー?」と言う二人のことを抱きしめた。
この牢獄 だけが全てだと思わせたくない。やっぱり、二人には自由に生きて欲しい。
「──二人に大好きと言われて、嬉しいのは分かるけど、葵お母さまもそろそろ着替えないとね⋯⋯?」
後ろから肩に手が置かれた時、すぐさま顔を上げた。
二人を着替えさせてあげている間に、着替えていた碧人の姿がそこにあった。
「じゃあ、あらたがしてあげる!」
「まこともやるっ!」
「二人とも⋯⋯」
「いいや。お母さまは自分で出来るから大丈夫だよ」
そうだよね? と微笑む夫に、そうではないくせにと返そうとした言葉が止まった。
愛憎混じえた目で見てくるのだ。
それは自分のものではなくなった葵人への異様なまでの独占欲であり、子ども達への嫉妬心であった。
子どもっぽくて、可愛いなんて呑気なことを言ってられない。
次に何をされるのかという前兆でもあるのだから。
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