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14.
「······子ども達がいる前で止めてよ!」
「葵が声を上げなければ別に関係ないことだし、栓しておかないと勝手に出しちゃうでしょ」
「だからって······!」
「早く着替えないと、愛しの子ども達が待っているんでしょう」
そう言いながら、葵人の浴衣に手をかける碧人に言い返そうになるのを堪え、せめての反抗として「自分でできるから!」とさっさと着物に着替えた。
自分が見える範囲できちんと整っているかどうか確認し、待ちに待っている子ども達の元に行こうとする葵人の足首に、夫が括り付けていた。
「ほら、葵。出来たよ」
「······うん」
にこやかに言う碧人をよそに足首を見つめていた。
あの日から、貞操具と共に足首に縄を縛り付けられることとなった。
走ることはもちろん出来ず、歩き方もぎこちなくなる。
一室の柱に片足首にされていた時のようだと、あの時の不安な気持ちが甦ってくる。
それもこれも自分のせい。
「愛しの葵。行こうか」
手を差し出してくる穏やかに笑いかける夫に、小さく頷いて、その手を取る。
そう、こうして支えてもらわないと、一歩踏み出すことも危うい。
あのことがあって、自分の手から離れさせないようにするためでもあるが、こうして自然と自分に頼らざるを得ない状況にするためでもあるのだろう。
よくこんなことを考える。
「あっ! きたきた! はやくはやく!」
「はいはい。······あら、真はどうされたのですか」
新が両手で手を引っ張ってくる一方、葵人の周りを懸命に嗅いでいる様子の真がいた。
「うーん······。さっきね、くさかったの」
心臓が飛び出るかと思った。
そうだ。碧人に無理やり抱かれて、射精 されていたんだった。
「き、気のせいじゃないでしょうか」
「そうだよ。お母さまはとてもいい匂いするのだから」
頬に軽くキスが落とされる。
着替えをしている時、碧人が桜の香水を付けてくれたから、今は臭いがしないと思いたい。
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