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「おかーさま、いいにおいするよー」 「······んっ」 「ほんとうだー。いいにおいー」 「······ひうっ」 足元に二人が抱きついて来る度に、前後の鉄の塊が刺激されて、いやらしい声を漏らしそうになるのを堪える。 この子達のすることはいつだって可愛いことだけど、今は離れて欲しいだなんて残酷なことを思ってしまう。 「ほら、大好きなお母さまにぎゅっとするのはいいけど、お腹が空いているんじゃなかったの?」 「そーそー!」 「いこいこっ!」 駆け出していく二人に「走ったら危ないよ」と言う碧人に耐えきれず、寄りかかった。 「なあに、葵。葵もぎゅっとしてくれるの?」 「······──して」 「ん?」 「もう、耐えきれないの。後ろだけでもいいから外し──」 「······葵はもっとお仕置きが欲しいようだ」 ぐっと寄せてきた時、静かに言った。 ぞくり、と背筋が凍った。 「ごめんなさいっ。外してだなんてもう言わないから、これ以上は······」 必死にしがみついて、許しを乞う。 目を細めて、思案しているような表情をしていたが、こちらに目を向けた時には、ふっと笑った。 「葵もお腹が空いているでしょう? 食べに行こうか」 葵にもあーんしてあげようか、と冗談混じりに歩を進める碧人に、ぼんやりとしたものの、慌ててその歩を合わせて共に向かったのであった。

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