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第11話
有希は四年の出来事を淡々と話し終えた。敬吾は胸が塞がれた。まとめて聞けば三十分ほどの話だがその中にどれ程の苦悩と悲しみが詰まっているのか……。
その全てがあの時美咲との交際を勧めた自分に責任があると思った。愛していた。愛していたからこそ身を引いた。この四年間有希を忘れることはできなかった。忘れようと他の男と付き合ったこともあるが、有希への思いが消えることはなかた。いつもどこかで有希の面影を追っていた。
有希と別れた喪失感は、敬吾の想像以上のものだった。それでも自分を保ってこられたのは、有希は幸せだと思っていたからだ。それなのに……。
「ごめん有希……俺が……俺のせいでそんな思いを……」
「敬吾さんのせいじゃないよ……僕が男として無能だった……そういうことだよ」
「有希は無能なんかじゃないよ」
「そうだよ、種無し……役立たずだよ」
離婚の原因を知れば有希がそう考えるのも無理はなかったが、それではネガティブな思考に囚われ有希は救われない。いつまでたっても心の傷は癒えないだろう。
敬吾は有希を救ってやりたかった。それがあの時とった自分の行為の責任だ。たとえあの時は有希を思っての事だったとしてもその結果有希が傷付いたのは事実だからだ。
有希の傷を癒してやらなければ、自分も救われない。どうやって救う? 抱いて受け身の喜びを与えてやればいいのではないか?
有希は男に抱かれることを受け入れるだろうか? 拒むだろうか? 肩を抱き寄せても、手を握っても拒まない、大丈夫じゃないか……。
抱いてひたすらに快感だけを注ぎ込んでやれば男に抱かれる喜びを感じるかもしれない。そうすれば無精子症なんてどうでもよくなる。男同士の関係に最初から子供はないのだから。
四年前は抱かないことが、有希のためだと思い必死に己の気持ちをセーブした。しかし今は抱いていいだろう。敬吾は自分で自分の背中を押した。
敬吾は両の手で有希の頬を包み込むようにして額にキスした。そして鼻先から頬に唇の端にも。
有希に嫌がる素振りはない。そのまま唇を食むようにすると有希が喘ぐように唇を開けた。
敬吾はたまらず有希の唇をふさぎ舌で歯列をまさぐり裏側や上顎、頬の内側を味わいそのまま深く口腔を犯した。
重なり合う熱い舌。感じやすい口の中を執拗に愛撫された有希の息も上がり始めている。
「男とは初めてだよな?」
長いキスの後囁くように言った。
男とのキスは、以前敬吾と経験している。初めて? それから先のこと……勿論初めてだ。頬を上気させた有希は小さく頷いた。そして恥ずかしさから敬吾の胸に顔を埋めた。
有希のあまりにも可愛い反応に敬吾の気持ちは高まった。戸惑いながらも任せてくれるだろうと敬吾は感じ取った。
それにしても三十過ぎて結婚経験もあるこの男の初心さは何なんだ。敬吾は喜びで叫びたい思いだった。
快感をじっくりと教えてやりたい、と同時に大切に優しく抱いてやらなければとまるで処女を相手にする思いだった。
いや有希の場合童貞じゃないけど、処女だよなと敬吾は己に突っ込んだ。
「このまま有希が欲しい……ベッドに行っていいか?」
有希は答えの代わりに敬吾の首に両腕を巻きつけてきた。そして喘ぐように言った。
「いいけど……」
さっきのキスで足の力が抜けたんだろうと察した敬吾はひょいと有希を抱き上げベッドルームまで運んだ。
看護師として患者を抱え慣れている敬吾にとって細身の有希を抱き上げることは造作もなかった。身長差も十㎝以上はある。
ベッドに優しくおろすと有希のシャツとズボンを脱がし下着だけにした。有希は恥ずかし気に横を向いている。そんなところも堪らなく可愛いと思う。
自分も下着姿になりベッドへ上がり有希を見下ろし微笑みと共におでこに口づけた。敬吾の唇はそのまま有希の頬を愛撫していき有希の唇へ……。
熱い舌で唇を舐めると有希がびっくとし唇を開けた。そのすきに中へ侵入し深く執拗に犯した。
有希は唇を吸われ、舌を絡め取られ、吐息さえ奪われる激しいキスに息も絶え絶えだった。溢れる唾液を敬吾がじゅるっと啜りあげた敬吾の手が有希の下着の中に入ってきた。
敬吾の指は既に立ち上がっていた胸の尖りを愛撫した。有希は思わず出そうになった声を手の甲で抑えた。
「声、我慢しなくていい。角部屋だから心配いらない。聞いているのは俺だけだから聞かせて」
「あっ……んっあっああ……」安心したのか有希がすすり泣くような声を出した。
その声にさらに激しく欲情した敬吾は、舌で有希の首筋から鎖骨そして胸の尖りを愛撫していく。
そして下着を通しても兆していることがわかる有希の昂ぶりに下着越し口づけた。
「あっ……あだめ……」
「大丈夫だ。俺にまかせて」
そう言って敬吾は下着から昂ぶりを出して口に収めた。
有希の昂ぶりは熱い粘膜に包まれ敬吾の柔らかな舌でねっとりと絡みつかれた。有希は経験したことのない快感に襲われる。
「あっ……ああけ……敬……吾……さん」
敬吾の舌戯に瞬く間高められた有希は甘い声で訴える。
「んっあっだめ……もう出るから離して……」
敬吾はそのまま舌で有希を追い詰めた。
「ああーああっでっ出る……」
有希は敬吾の頭を弄りながら敬吾の口の中で果てた。
放心状態の有希はぼんやりとして快感の余韻に浸っているようにも見えた。
敬吾はそんな有希に優しく微笑みおでこへキスした。
「大丈夫か?……気持ち良かった?」
有希は頷きつつ縋りつくように敬吾の胸に顔を埋めた。余りの快感に恥ずかしくてとても敬吾の顔を見られなかった。
そんな有希に益々愛しさが募った敬吾は、有希の尻を撫でた。
「ここはどうかな? ……今日は終わりににするか?」
初めての有希に無理はさせたくない。あくまでも有希の快感を優先したい。
「大丈夫最後までして……ちゃんと最後まで抱いて欲しい」
「そうかじゃあ試してみよう。無理はさせたくないから辛かったら言って」
そう言いながらベッドサイドの引き出しからローションを出して手に取ると、再び有希に身体を重ねた。
濡れた指先で有希の蕾に触れるとキュッと口を閉ざした。
「大丈夫だリラックスして痛くないから……」
そう言いながら耳や首元にキスしながら有希の蕾に指を入れる。1本、2本と……。
敬吾は時間をかけて解していく。最初は堅かったそこが段々と柔らかくなっていく。
「あっ……んっあーっも……ああーっ」
有希の甘い声が高まっていく。指も3本に増えていた。そろそろ頃合いか?
「有希ここに俺の入れて大丈夫か?」
有希は敬吾にしがみつきながら頷いた。敬吾は安心させるように有希の背を撫でてから身体を離した。そして素早くコンドームを装着してから有希を俯せにした。
「この体勢の方が楽だから。なるべく優しくするけど辛かったら言うんだぞ」
敬吾は有希の後ろからゆっくりと自身を埋め込んでいく。ローションのぬめりはあるものの圧迫感はかなりのものだ。
「有希リラックスしろ。ゆっくり息を吐いて力を抜くんだ……そういいよ……上手だ」
敬吾のものは有希の中に深く入った。二人はお互いに一体したことを感じた。
「馴染むまでこのまま……有希愛しているよ」
敬吾は有希の項に口づけながら囁いた。
「ぼ僕も……愛している……大丈夫だから動いて。ちゃんと敬吾さんも気持ち良くなって」
「気持ちいいよ。こんなに気持ちいいのは初めてだ……最高だよ」
敬吾はゆっくりと抽挿を開始した。興奮が増すごとに次第に早く……。
敬吾の興奮と共に有希の快感も増してきた。反応して昂った有希のものを敬吾が腰の動きに合わせて扱いていく。
「あっ……あーだめっ……いくから」
「あーいっていいぞ。一緒にいくぞ」
二人は同時に果てた。
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