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第19話 【番外編SS】 忍の裏日記
『忍の裏日記』
読者の皆さん、はじめまして、仲里忍です。
これは俺の裏日記です。
なぜ裏なのか、ということはこれから説明します。
これを読んでいる皆さんは、俺と章吾のなれそめは知っていると思いますが、俺は実は章吾が思っているほど可愛いやつじゃありません。
結構裏もあるし、策略家です。
やたら恥ずかしがっているのも、半分はそういう俺を章吾が喜んでいるのを知っているからです。
ちなみに、なぜ日記なのに読者の皆さんに話しかけているかというと、なんとなく俺の日記は誰かに見られているような気がするからです。
俺は別にこの日記を章吾以外の人になら見られても全然構わないので、読むなり宣伝するなりご自由に。
では、俺の裏日記、スタートします。
ことの発端は、章吾が俺と一緒に東京に戻ってきてからのことです。
章吾がパソコンを持っていないので、俺は自分のパソコンを共有することにしました。
特に見られて困るデータもないし、自由に使っていい、と言っておいたのです。
章吾が料理のレシピを検索したり、個人的なメールをチェックするのに使うというので。
俺、実はパソコンで日記をつけてたのを忘れてたんです。
日記と言ってもパソコンで簡易日記ソフトを使って、その日にあったことを覚え書きのように書く、というだけの簡単なもので。
章吾が転がり込んできてからそれどころじゃなくて、すっかり日記のことなんか忘れてたんですが。
章吾と同居生活をスタートさせて、やっと落ち着いた俺は久しぶりに日記を書いたんです。
『章吾と同居スタート。またあのカレーが食べられると思うと嬉しい』
最初の日はそう2行書いただけです。
しかし、翌日カレーだったんです。
勘の良い読者さんはすでにお気づきかと思いますが、そんなに都合よくカレーが出てきたことに俺は疑問を抱きました。
そして翌日、俺はまた日記を書きました。
『最近、頭痛が酷い』
どうなったと思いますか?
そうです。
我が家の薬箱の中に、新しい頭痛薬がこっそりと増えていたのです。
章吾は秘書としてとても気が利くやつですが、これでは日記を盗み読みしているとバラしているようなものです。
俺は念のため、翌日また日記を書きました。
『頭痛はどうやら風邪ぎみのようだ』
そして、薬箱の中には新しい風邪薬が増えました。
俺は、これはどうしたものか、と考えた。
別にたいしたことは書いてないので、章吾に日記を見られるのは構わない。
せっかくならこれを利用させてもらおうと思ったのです。
ね、俺、ずるいやつでしょ。
俺は口べただし、気が短いし、言いたいことがうまく言えないことが多い。
しかし、ここに一言書いておくぐらいのことはできる。
あとは章吾が勝手に盗み読みして、俺の気持ちをわかってくれればいいわけです。
なんとも良いシステムでしょ?
俺はこの章吾専用の日記を、表日記、と名付けました。
で、今皆さんが読んでいるのは、裏日記。
俺の本当の日記はこっちです。
なんだか会社の二重帳簿みたいで、俺としては気に入っています。
章吾は俺の日記を読むのを楽しみにしているのか、帰宅したらすぐにパソコンを開いています。
俺は章吾の楽しみを奪わないように、その時は声をかけないことにしています。
そして、昨日はちょっとだけ、章吾を喜ばせてやろうと思って日記を書いたのです。
『俺がセックス禁止と言ったから、章吾はあれきり手を出してこない。もう少し強引に誘ってくれてもいいのに』
せっかく同居生活がスタートしたのに、俺は仕事の愚痴ばっかりこぼしてしまうし、平日はセックス禁止と言ったのを章吾はちゃんと守ってくれているのですが。
一応恋人同士なんだし、あんまり厳しくするのもなんだしね。
だからと言って、俺からセックスに誘う、などということは逆立ちしてもできない訳で。
ふ、ふ、ふ。
結果は皆さんご想像の通りです。
やっぱりこの日記システムは抜群です。
昨夜の章吾はすごかった……
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