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第22話 キスがしたい

 『忍の裏日記』  読者の皆さん、前回の裏日記の結果は読んでいただけましたか?   昨日の章吾はすごかった。  思う存分イきまくりました。  お陰で遅刻しましたけどね、今日。    こううまくいくと、俺としちゃあ、もっといろんな要望を書きたくなるわけです。  さて、今日は何を書いておこうか……    見たいです?  見たくない人は、ブラウザバックしてお戻りください。  いくら読んでも、ここには俺のノロケしか出てきませんから。    それでもいい、という物好きな方はどうぞ先をお読みください。 『○月×日   章吾はセックスの時しか、キスをしない。  普通恋人同士というのは、一日中キスをするもんじゃないだろうか。  それとも、章吾は俺の身体だけが好きなんだろうか。』 ◇  じょ、冗談じゃないぞ。  沢田はパソコンの画面を見ながら、顔色を変えた。    身体だけが好きで十年も惚れてられるかっての!  忍がそんな風に思っているとは思わなかった。  これは誤解を解かなくては。    しかしなあ……  会社には仲里の叔父さんがいる。  沢田は新しい仕事に慣れるのにいっぱいいっぱいだ。  仲里は仕事中は厳しいし、そんな甘いムードなどかけらもない。    朝は仲里は低血圧で機嫌が悪いし、帰ってくると疲れてさっさと寝てしまう。  それに帰ってから甘いムードになると、沢田は我慢できなくなってセックスにもつれこんでしまいそうで避けていたのだ。  もともと友達同士なんだし、普通に会話して、一緒に食事して、それだけでいいかと思っていたんだが。    うーん。  まあ、チャンスがあれば努力しよう。  俺だって、忍と一日中キスしたい。    しかし不思議だ。  忍はこういうことは苦手だと思っていたのに、日記には結構俺に抱かれたいとか、キスされたいと思っているようなことが書かれている。  どっちが本当の忍なんだろう。    でも、昨日だって強引にヤってみたら、結構アイツもノリノリだったしな。  まあ、日記に書くぐらいだから、きっとこれが本音なんだろう、と沢田はニヤニヤしながらパソコンを閉じた。    朝は沢田が先に起きて朝食の支度をする。  仲里は貧血ぎみなので、きちんと食べるようにさせているのだ。  支度ができてから、仲里を起こしに行く。   「忍、起きろ。朝飯できたぞ」    寝起きの悪い仲里は、うーん、と寝返りをうってぐずっている。  お姫様を目覚めさせるのは、王子様のキス、と決まっている。  息苦しくない程度に、起きるまで何度もキスをしてやると、仲里が突然がば、っと飛び起きた。  めずらしい。   「ん、あ、え? 章吾……」 「おはよう」 「あ、お、おはよう」 「朝飯、できたぞ」    おでこにちゅっとキスを落としてやると、仲里は呆然と沢田を見ている。    ふむ……なかなかいい起こし方だ。  いつもより素直に起きてくれた。  顔を洗ってリビングにやってきた仲里にコーヒーを手渡しながら、再び髪に軽く口づける。   「早く食べないと時間ないぞ」 「あ、うん……」    いつも朝は不機嫌な仲里が、今日は心なしか呆けたような顔をして大人しくパンを囓っている。  これはなかなか楽しいぞ。    沢田は鼻歌を歌いながら出勤の支度をする。  仲里はそんな沢田を観察しながら、けして笑わない努力をしている。    昨日は夕食のあと先に休んだんだが、やっぱりあれから章吾はパソコンチェックしたんだな。  しかし、章吾があまりに単純で、申し訳ないような気がしてくる。   「忍、行くぞ」    玄関で靴を履いて待っている沢田を追いかけて、靴を履いていると沢田が突然仲里を抱きしめる。   「何? 急いでんのに」 「急いでても、1分ぐらい時間あるだろ」    沢田は強引に唇を重ねる。  とろり、と舌裏をなでるような、極上のキス。  仲里はこのキスに弱い。  一瞬仲里の身体からふにゃっと力が抜け、それから思い出したように突き放された。   「朝っぱらからなんだよっ!」 「いいだろ。会社行ったらできないんだから」    ニヤっと笑って、沢田は軽い足取りで玄関を出た。  後ろから追いかけて歩きながら、仲里はちょっと困っていた。    軽いキスならいいんだけど……  ああいう舌を絡ませるようなキスをされると、一瞬で勃ってしまう。  そこまでは想定外だった。    沢田は多分本気で一日中キスしようと考えているのだろう。  これは困ったぞ……  家の中ならいいが、さすがに会社では全力で阻止しないと。  

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