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8.
「⋯⋯一応は、完成したけれど⋯⋯」
本格的に寒くなる前に出来上がった物を並べたのを見て、眉根を寄せる。
碧人に指摘された通り、マフラーを編んだのは今回が初めてだ。編み物初心者でも、編み方がさほど複雑ではないので、編んでいけば、それとなく形が出来ると本に書いてあったので、少しずつ出来上がっていく過程で、比例するように自信がついてきたと思っていたが。
三本を改めて並べてみても、何度見返しても、既製品と見間違えるほどの出来ではなかった。
編み方が甘かったのであろう、ところどころほつれかかっているし、どことなく、真っ直ぐではなく歪んでいる。
こんなの、あげられない。
背伸びして、手作りしなければ良かった。
改めて碧人に買ってきてもらおうと、手編みマフラーに手をかけようとした時。
「これなに? なに?」
「おかーさまが、ないしょっていってたものー?」
「あ、あなた達、いつの間に来たのですっ!」
ひょこっと、並んで見ていた小さな子達に、思わず声を上げた。
「あらたのー?」
「まことのー?」
「そうです。そのつもりでした。あなた達がこないだ寒そうにしていたので、マフラーを編んでいたのですよ」
「まふらー!」
「ねぇ、まいてー!」
つぶらな瞳でそう言ってくる二人に、一瞬虚を突かれた。
こんな大した出来ではない物なのに。
そう思いながら、申し訳なさそうに一人ずつ巻いてやると、二人は揃ってわっと声を上げた。
「おかーさま、ありがとー!」
「あらたとまことのまふらー、とってもうれしー!」
マフラーに触れて、ワイワイとはしゃいでいた。
二人は上手い下手というよりも、お母さまが自分らのために編んでくれたからということで、喜んでくれたのだろう。
その喜びを全身で表してくれ、その姿に葵人は。
「おかーさま······?」
「どーしたの? どこかいたい?」
きょとんとした瞳に向けられて、初めて自分が泣いていることに気づいた。
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