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「⋯⋯一応は、完成したけれど⋯⋯」 本格的に寒くなる前に出来上がった物を並べたのを見て、眉根を寄せる。 碧人に指摘された通り、マフラーを編んだのは今回が初めてだ。編み物初心者でも、編み方がさほど複雑ではないので、編んでいけば、それとなく形が出来ると本に書いてあったので、少しずつ出来上がっていく過程で、比例するように自信がついてきたと思っていたが。 三本を改めて並べてみても、何度見返しても、既製品と見間違えるほどの出来ではなかった。 編み方が甘かったのであろう、ところどころほつれかかっているし、どことなく、真っ直ぐではなく歪んでいる。 こんなの、あげられない。 背伸びして、手作りしなければ良かった。 改めて碧人に買ってきてもらおうと、手編みマフラーに手をかけようとした時。 「これなに? なに?」 「おかーさまが、ないしょっていってたものー?」 「あ、あなた達、いつの間に来たのですっ!」 ひょこっと、並んで見ていた小さな子達に、思わず声を上げた。 「あらたのー?」 「まことのー?」 「そうです。そのつもりでした。あなた達がこないだ寒そうにしていたので、マフラーを編んでいたのですよ」 「まふらー!」 「ねぇ、まいてー!」 つぶらな瞳でそう言ってくる二人に、一瞬虚を突かれた。 こんな大した出来ではない物なのに。 そう思いながら、申し訳なさそうに一人ずつ巻いてやると、二人は揃ってわっと声を上げた。 「おかーさま、ありがとー!」 「あらたとまことのまふらー、とってもうれしー!」 マフラーに触れて、ワイワイとはしゃいでいた。 二人は上手い下手というよりも、お母さまが自分らのために編んでくれたからということで、喜んでくれたのだろう。 その喜びを全身で表してくれ、その姿に葵人は。 「おかーさま······?」 「どーしたの? どこかいたい?」 きょとんとした瞳に向けられて、初めて自分が泣いていることに気づいた。

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