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9.
「あ······違うのですよ。あなた達があまりにも喜んでくれますので、嬉しくて」
手袋に包まれた手で拭った後、片手ずつ頭を撫でてあげ、微笑みかけると、ほぼ同時に満面な笑みを見せてくれた。
「さむくないね!」
「ねぇねぇ、おそとにいってもいい?」
真に対し、「いいですよ」と答えてあげると、「いこ!」と二人は手を繋いで、庭へと飛び出して行った。
「走ったら、危ないですよ」と縁側に座った葵人はそう声を掛けながらも、愛らしい二人が駆け回る姿を見て、頬が緩んだ。
「二人分は出来たんだ」
「ひゃあっ!」
新と真のことを夢中になって見ていたおかげで全く気づかなく、悲鳴にも似た声を上げてしまった。
「いっ、いつの間にいたの!」
「二人に愛らしい笑みを浮かべていた時だね。その顔をもっと僕に見せてくれても構わないけど、その表情も堪らないね」
一緒になって驚く様子はなく、むしろ心底嬉しそうに笑う夫に、驚いた自分が恥ずかしくなり、俯いた。
「一緒になって寝ていたかと思えば、新と真が寝静まった頃に編んでいたよね」
「起きていたの!」
「うん。誰かのために一生懸命頑張ってる葵の姿をこっそり見たくて、ね······」
悪びれもなくそう言う碧人に、口が半開きとなった。
とにかく早く完成させたくて、二人が寝ているのを時折見ながら編んでいたが、碧人のことは気にもしてなかった。
こそこそしていたことを誰かに見られていたのがどことなく恥ずかしく感じる。
「えらいね」としゃがんで頭を撫でてくる。
さっきとは違う火照りを感じ、心が落ち着かなくなった。
夫婦となる前からその行為をされるのが好きで、ずっとそうしてもらいたいと今も思うが、無理やり夫婦として心身共に刻まれていく中で、それ以上のことを求めてしまいそうになり、気づけばその手をそっと触っていた。
「葵?」
不思議そうな顔をされた時、ハッとして「なんでもない!」と慌てて手を離した。
こんなところでやましいことを考えてしまうなんて、本当に自分は悪い子だ。
膝上に乗せていた手をぎゅっと握りしめる。
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