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第10話
「······そういえば、お仕事は終わったの?」
「一区切りがついたんだ。その気分転換に葵に会いたくなって来たんだよ」
「そうなんだ」
「葵はまだ怒ってる?」
「別にもう怒ってない」
「じゃあ、僕の分もあるってことかな」
穏やかな笑みをくれる夫に、葵人はムッとした。
分かっているくせに。
「でも僕、新と真を見ていたいから、取りに行けないの」
「ふーん、そう······」
少し残念そうな顔を見せる。
勝った! と心の中でガッツポーズしていた、その時。
ふわっと、宙に浮いた。
それが急に碧人が抱きかかえたのだと分かった時には、彼の膝上に乗せられていた。
「え、えっ、何、急に」
「葵の温もりを感じながら、僕も新と真を見ていようかなって」
「そう、なの。急にするから、びっくりしたよ」
「ふふ、ごめんね」
頭を撫で、その反対側では髪に優しく触れるように口づけをしてくる。
嬉しくとも、落ち着かなく、指を忙しなく組み替えているところに、お腹辺りに碧人の手が回された。
「ほら、葵。新達が面白いことをしているよ」
碧人にそう促され、庭に目を向けると、やや離れたところで向かい合った互いの手を片手ずつ繋いで、左右に大きく振っていたかと思うと、その手を潜って、互いの背を向ける形となり、そのことで面白いと思ったのか、大はしゃぎしていた。
「ふふ、懐かしい遊びをしてる」
「僕達もやっていたよね。手が絡まったりして、なかなか背中を向けることが出来なかったんだよね」
「そんなこと、あった──ッ」
突如、着物の上から足の間に静まっているモノを呼び起こすかのように、強く揉まれ、大きく体がビクついた。
「い、いきなり、何する、んッ」
「さっきから、葵は僕と遊びたそうに誘っているから、遊んであげようかなって」
「でも······っ! こんな、とこで······あっ、見てる、からぁ!」
「真と新は遠くにいるし、僕達のすぐ近くに誰がいるっていうの······?」
そうだ、碧人はすぐそばで監視目的でいる使用人のことを、物としか思っておらず、このようなことをしても平然としている。それに。
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